【生きる働く】マタハラ 企業の人材確保にもリスク 長時間労働見直しを 支援団体が催し

マタハラと働き方について議論する小酒部さやかさん(右)ら 拡大

マタハラと働き方について議論する小酒部さやかさん(右)ら

 妊娠や出産をきっかけに、嫌がらせをされたり、解雇や降格などの不利益を被ったりする「マタニティーハラスメント」(マタハラ)。連合の調査では、働く女性の5人に1人が経験している。マタハラの現状について知り、これからの働き方を考えるイベントが3月30日、東京都内で開かれた。

 イベントは、マタハラの被害者支援に取り組む団体「マタハラNet」代表の小酒部さやかさんが、米国務省が選ぶ「世界の勇気ある女性賞」を日本人として初めて受賞したことを記念し、同団体と趣旨に賛同する団体が協力して開いた。

 「マタハラNet」は、1月に行った実態調査の結果を公表。被害女性186人の回答を分析したところ、企業規模の大小を問わずマタハラが起きていることや、加害者は男女共にいることが浮き彫りになったという。労働環境は、「残業が当たり前で8時間以上の勤務が多い」と答えた人が38%、有給休暇を一度も取得していない、年1~2日しか取得していない人が計44%だった。

 小酒部さんは「マタハラがはびこる原因は、性別役割分業意識と長時間労働。なくすためには、働き方を見直す必要がある」と強調。授賞式のために訪れた米国では、行く先々で「先進国の日本でなぜマタハラが起きるのか」と質問されたことに触れ、「日本は30年遅れている。この現状を真剣に受け止めなければならない」と力を込めた。

 調査を監修したダイバーシティコンサルタントの渥美由喜さんは「1件でもマタハラが起きると、社内だけでなく社外にも風評が拡散し、企業は大きなリスクを負うことになる」と指摘。男性も育児や介護などで「制約社員」になる可能性があるとして、「あらゆる社員が活躍できる環境をつくっていく必要がある」とコメントした。

 社員の私生活も応援しながら業績を出せる上司「イクボス」も登壇した。ソフトウエア開発「サイボウズ」は、最長6年まで育休が取れ、在宅勤務や週3日勤務など、柔軟な働き方を取り入れている。以前は長時間労働が当たり前だったが、2005年に離職率が28%となり、働き方を見直したという。3度の育休を取った青野慶久社長は「現在離職率は5%以下で、優秀な人材がどんどん集まる。社員のためにというより、会社が立ちゆかなくなるから経営戦略として取り組んでいる」と話した。

 働きやすい会社に変えるために、何をすればよいのか。「イクボス」の普及に取り組むNPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表は、「抜本的な方法は、人事考課制度を変えること。アメリカでは育休取得を履歴書に書いた方が転職に有利とも聞く。イクボスの方が得なんだと、意識を変えていく必要がある」と指摘した。

 厚生労働省は、昨年10月の最高裁判決を受け、妊娠や出産、復職などから1年以内の降格や契約打ち切りなどの不利益な扱いは原則、男女雇用機会均等法などに違反するとし、悪質な企業名を公表するとの方針を決めた。また本年度中に初の実態調査を行うなど、マタハラ対策に本格的に乗り出す計画だ。

 女性の労働問題に詳しい圷(あくつ)由美子弁護士は「女性が声を上げやすくなってきた。被害に遭ったら、泣き寝入りせず、まずは相談してほしい」と話した。

 ◇マタハラNetはブログで相談や意見を受け付けている。http://mataharanet.blogspot.jp/


=2015/04/11付 西日本新聞朝刊=

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