【生きる 働く 第4部】やりがい求めて 就活を考える<2>情報サイト依存 弊害も

 アルバイト帰りの地下鉄の中。福岡市内の大学4年の歩美さん(21)=仮名=がスマートフォンで希望する企業の説明会に申し込もうと案内のページを開くと、そこには「満席」の文字があった。「またか…」。申し込みに間に合わなかったのはこれが初めてではなかった。

 人気企業の説明会は、受け付け開始時間にパソコンの前で待機していないと、すぐに満席になる。バイト中は携帯電話を見られないし、他の企業の説明会に参加しているとタイミングを逃してしまう。興味のある企業の説明会はできるだけ足を運んで違いを知りたいが、バイトに、就職活動に、授業に「とにかく時間がない」のが現状だ。

 就活はやることが多い。まずインターネット上の就職情報サイトで複数の企業にエントリー(企業に興味があることを意思表示すること)した後、企業から説明会などの案内を知らせるメールが来るため、毎日欠かさずチェックする。日中は大学や企業で行われる説明会に参加し、合間に履歴書やエントリーシートを書く。

 アルバイトを掛け持ちして生活費を稼ぐのは、母親に持病があり、1人暮らしで私立大という負い目もあって、実家に負担を掛けたくないからだ。広島など、近くで開催されない説明会に行く交通費を捻出するため、4月上旬は選挙のウグイス嬢のアルバイトも加えた。

 今年から就職活動開始の解禁日が繰り下げられ、面接などの選考期間がこれまでより短くなった。「準備もしなくてはいけないから、多くの企業を受けられないのでは」という不安もある。「就活をやめられるものならやめたいんですけどね」。苦笑いしてつぶやいた。

 厳しい就活を乗り越え、就職できても早期離職するケースもある。長崎市の真一さん(23)=仮名=は、卒業後に勤めた住宅メーカーを約1年で退職した。退社できるのは平均で午後10時。残業代は出ない。月6日の休みも、支店全体の業績が悪いとカットされることも少なくなかった。

 「入社前に聞いていた条件と違う」。仕事にやりがいは感じていたが、ずっとこの環境でやっていけるのか不安になった。年の離れた先輩が自分と年収が変わらないと聞いたのも、退職を決意した理由の一つだ。

 今、ハローワークに通って再就職先を探している。再就職できると思う半面、「本当に決まるんだろうか、もし決まっても聞いていた条件とまた違って後悔するんじゃないか」という不安が尽きない。

 就職情報サイトに登録し、企業にエントリーすることから始まる現在の就活システム。インターネットで簡単に多くの企業に応募でき、企業側も以前のように大量の資料請求はがきを処理しなくて済むなど効率的で、両者にメリットがある。一方、さまざまな「副作用」もある。

 千葉商科大国際教養学部の専任講師、常見陽平さん(雇用・労働)は「今の就活における問題は、学生と企業の出会い方の構造的な要因と、その出会うプロセスの負荷という摩擦的要因があるのではないか」と指摘する。

 就職情報サイトに過度に依存し、学生が大手企業しか知らないという構造的な問題。就職に至るまでの過程で、大量に応募して大量に落とされるシステム、多段階にわたる選考、不透明な選抜基準-などの「摩擦」によって、学生は負荷を感じるという。企業の情報開示が少ない問題もある。常見さんは「出会い方は就職情報サイトだけではないことに、学生は目を向けてほしい」と訴える。


=2015/04/15付 西日本新聞朝刊=

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