世界記憶遺産 山本作兵衛の炭鉱記録画と資料 保存の取り組み、課題を紹介 九州国立博物館で報告展

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録された、筑豊の炭鉱記録絵師・山本作兵衛(1892~1984)の作品と資料について、福岡県田川市が行ってきた3年の保存事業が終わった。19日まで、同市などが主催する「保存処置作業完了報告展 1095日の軌跡」が九州国立博物館(同県太宰府市)で開かれている。

 田川市の市石炭・歴史博物館は、記憶遺産となった全697点のうち、記録画585点と、日記や雑記帳といった資料42点を所蔵する。子孫に炭鉱の仕事や暮らしを伝えたい、との一念で絵を描き始めた作兵衛は、手近に買えた児童用のスケッチブックなどを使い、日記類も市販のノートや手帳につづった。特に帳面類は、使用による傷みに加え、紙がもろくなって破れたり変色したりする酸性紙特有の劣化が見られ、記憶遺産に求められる保全が課題となっている。

 酸性紙は、大量生産の過程で、空気中の水分と結びついて硫酸に変化する成分が使われた洋紙のことで、日本では1980年代に劣化の速さが知られるようになった。対策技術は開発されているものの、どのくらい劣化を遅らせることができるのか、逆に対策が資料へ悪影響を及ぼさないか、といった結果が出るまで時間を要する事項は確かめられていない。

 NPO法人・文化財保存支援機構(東京)の指導を受けた田川市は、1点ずつ傷み具合を調べ、紙の劣化を進めるセロハンテープや裏打ち紙を外したり、新たに台紙や保存箱をあつらえたりする処置を講じた。一方、アルカリ性の薬品を使う対策などは見送った。

 報告展では、▽記録画2点▽日記など7点▽「安全第一」と書いてある各種のバッジや写真9点-を紹介し、それぞれの処置の方法も解説する。同市は昨年10月に記憶遺産の取り扱い方針を改めており、帳面類は痛みがひどいため「最後の公開」の予定という。報告展の入場は無料。

 18日午後1時からは九州国立博物館で、文化財保存支援機構の大林賢太郎副理事長(京都造形芸大教授)による事業報告や、近現代の紙資料の保存と活用をテーマにシンポジウムを行う。参加無料。田川市石炭・歴史博物館=0947(44)5745。


=2015/04/16付 西日本新聞朝刊=

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