【生きる 働く 第4部】やりがい求めて 就活を考える<4>仕事を体感 世界広がる

「キャリアスクーププロジェクト」の研修会で学生を前に話す古賀正博さん(左) 拡大

「キャリアスクーププロジェクト」の研修会で学生を前に話す古賀正博さん(左)

 「学生が中小企業で働く人たちを取材し、記事を書いてウェブ上で企業の魅力を発信する」という、少し変わったインターンシップがある。福岡中小企業経営者協会(福岡市、368社)の「キャリアスクーププロジェクト」だ。

 キャッチフレーズは「仕事人に『ドラマ』あり」。2012年から毎年7~9月、主に福岡県内の学生が県内の中小企業に面会の約束を取ることから始め、打ち合わせ、取材、原稿執筆などを行っている。昨年は約80人の学生が参加し、約80社の中小企業が協力した。

 学生が取材するのは、働く人の仕事に対する思いだ。なぜ起業したのか、なぜそこで働くのか。「人には絶対にドラマがある。学生がそこに触れることでその会社に行きたいと思わなくても、就職先を考える基準が知名度や企業の規模などから、やりがいや働きがいに広がると思う」。企画した同協会理事の古賀正博さん(46)は熱く語る。

 古賀さんは10年まで約20年、大手電機メーカーで人事を担当。就職情報サイトを中心とした就活システムに疑問を抱いていた。大量に応募できるため、面接で学生と接しても「この会社で働きたい」という本気度が分からない。民間企業などで面接やエントリーシート対策講座が出始めると、皆同じような答え方になって個性が感じられなかった。

 現職に就いてからは、経営に必死で採用を諦めていたり、採用するシステムがなかったりする中小企業の事情が見えてきた。一方、学生は就職情報サイトに載っている大手企業しか知らない。学生を「リアルな社会」に引っ張り出し、企業やボランティアの社会人に協力してもらいながら、地域で学生を育てるというこのプロジェクトを企画した。

 2年のときに参加した福岡工業大4年の柴本裕真さん(23)は、この体験が就活に役立っているという。「理系だから技術者になるのが当たり前だと思っていたが、働く人たちに出会い、いろいろな生き方があると分かった」

 古賀さんは言う。「就活は、今からどんな舞台で自分が活躍できるかを探す、本来わくわくすること。それをウェブ上の条件検索でするのはどうなのか。もっと人に会って五感を研ぎ澄まして選ぼうよって、学生に伝えたい」

 「体験」に注目する動きは他にもある。

 ショップのバイヤー、革小物職人、照明デザイナーに農家、探偵…。旅行会社「仕事旅行社」(東京)のホームページには、全国各地でさまざまな職業を体験するツアーが並ぶ。

 代表の田中翼さん(35)が会社を立ち上げたのは4年前。以前は金融業界で働いていた。仕事は面白く給料も悪くなかったが、「ずっとここで働くのか」ともやもやした気持ちを抱いていた。そんなとき、知人の働くベンチャー企業を訪問し、短パンとTシャツ姿で音楽を聴きながら働く様子に衝撃を受けた。その後、さまざまな会社を訪問してみた。

 「働くってこんなに自由で楽しいんだと、世界が広がった。旅行のようにもっと気軽に仕事を体験する場をつくりたくて」。ツアーには、小学生から高齢者まで月約300人が参加。20代後半が最も多く、転職を考えている人も少なくないという。

 体験が実際の転職につながるケースもある。福岡県八女市で伝統工芸品などを扱うアンテナショップ「うなぎの寝床」は昨年9月、仕事旅行のツアー先に加わった。代表の白水高広さん(29)は「多くの人に手仕事の現場に触れてほしいと始めたが、人材発掘的な側面も出てきた」。体験をきっかけに、参加者の中には、入社を交渉中の人や、陶芸家を目指し学校に行き始めた人もいるという。


=2015/04/17付 西日本新聞朝刊=

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