さまよう核のごみ(2)の1 処分場、原発稼働の前提

 仏アレバ、独シーメンス…。世界屈指の原発関連メーカーの作業員がせわしなく行き来する。

 フィンランドで使用済み核燃料を最終処分するための準備施設「オンカロ」の入り口から西に、わずか2キロ。オルキルオト原発3号機の新設工事が急ピッチで進む。

 ◆安全規制 高い独立性

 安全性強化のため二重になった巨大な原子炉格納容器が横たわる。完成すれば出力160万キロワットと世界最大級。「最終処分場を受け入れたのは、原発新設にプラスだからだ」。地元自治体エウラヨキの首長ハッリ・ヒーティオは明かした。

 人口約6千人の過疎地域。今、その1割が原発関係で働く。加えて工事関係者約3千人が一時的に住み込んでいる。

 「低い失業率に満足している」とヒーティオ。

 税収のうち原発施設の不動産税が約2割を占め、財政を支える。働き口も主な財源も原発に頼る姿は、日本の過疎の立地自治体とダブる。

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 国境を接する大国、帝政ロシアの支配に苦しんだフィンランドは、エネルギーをそのロシアに依存してきた。「脱ロシア」の国民感情は強く、切り札が原発。福島第1原発の事故後も推進の方針に変わりはない。

 最初の原発稼働は1977年。6年後の83年には2020年を処分開始の目標に設定した。原発とごみ処分をごく自然にセットと考え、今もほぼ計画通りに進んでいる。

 オンカロの運営会社、ポシヴァ社の幹部はこう解説する。「原発は当初、政府から運転許可を5年間しかもらえなかった。原発継続には最終処分に道筋をつけないといけないと政府が考えていたからだ」。“トイレなきマンション”と批判され続けても、50基を超える商業炉が建設された日本とは対照的だ。

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 対照的なのは、それだけではない。最終処分場計画を安全面から「支障ない」と評価した政府の原子力規制機関、放射線・原子力安全センター(STUK=ストゥク)の独立性が高い。

 ヘルシンキ郊外にあるSTUKは、原子力工学や生物学などの専門家約360人で構成する。予算のうち50%は原発の取り締まり、検査料として事業者から徴収。国からは研究費のみという。

 「原発関連規制の最終決定は私がする。政治に左右されない」

 STUKの所長、テロ・ヴァルヨランタはきっぱりと言った。

 「原発を推進する雇用経済省との人事交流はないのか」と問うと、苦笑いしながら「やったことがありません」。

 資源エネルギー庁と旧原子力安全・保安院という推進、規制組織を行き来して出世させてきた日本のような人事交流はない。原発会社に転職する場合も同じ仕事をするのを禁じる徹底ぶりだ。

 国内外の原発事故のシミュレーションを毎日4回実施する。事故が発生した場合、避難の必要性などの判断をするのもSTUK。首相官邸の関与は必要としない。

 「最終処分場が『安全』と言うSTUKを、最後はわれわれが信頼していいかどうかだ」と、エウラヨキのヒーティオ。

 だが、STUKといえども万年単位の監視が求められる処分場の安全に本当に責任を持てるのか。

 「処分場の存在は1万年後も忘れない」

 ヴァルヨランタは自らに言い聞かせているように見えた。

 日本の適地選びはどうなっているのだろう-。

 (敬称略)

=2013/03/03付 西日本新聞朝刊=