さまよう核のごみ(2)の2 日本の最終処分場選び

鹿児島県南大隅町長選に出馬を予定している新人候補の後援会長として町内で応援演説する俳優、山本太郎さん=2月5日 インタビューに応じる映画「100000年後の安全」のミケル・マッスン監督

 「私、俳優の山本太郎と申します。なぜ南大隅にいるのか。それは、核のごみ捨て場として狙われ続けているからです」

 2月上旬、九州最南端の佐多岬を有する鹿児島県南大隅町。山本は路上でマイクを握っていた。見守る住民は少ない。遠くに野生のサルがいた。

 かつてテレビドラマなどに出演し、東日本大震災を機に脱原発運動に転じた38歳。今の肩書は、4月14日投開票の南大隅町長選で立候補を予定する新人、元商工会会長、肥後隆志(61)の後援会長だ。

 ◆札束で釣る手法 限界

 人口8千人余り、農業と水産業の静かな町が揺れている。

 きっかけは昨年8月のテレビ報道。福島第1原発事故で生じた汚染土の持ち込み先に南大隅町が浮上したと伝えた。2007年にも、当時の町幹部らが使用済み核燃料の最終処分場の誘致に向けた勉強会をひそかに開いたことが発覚し、町民の反発で立ち消えになっている。再燃した反対運動に、知名度のある山本がはせ参じた。

 「震災前は最終処分場の誘致に百パーセント賛成だった。今は放射性物質が安全とは思えない。子どもたちのためにもだめだ」。建設業を営む瀬戸山慶喜(66)は、山本の話に聞き入った。

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 「最終処分場計画については『断固反対』をきっちり表明します」。再選を目指す現町長、森田俊彦(53)は昨年の9月議会で約束した。町議会は昨年末、一切の放射性廃棄物の持ち込み、関連施設の立地を拒否する条例を可決した。

 表面的には対立点はない。それでも町長選の争点として語られるのは、森田が07年の誘致活動の中心人物だったからだ。

 最終処分場の立地先探しは、電力会社でつくる原子力発電環境整備機構(NUMO=ニューモ)が担う。原則公募方式だ。原発立地自治体と同じく電源3法が適用され、応募自治体に年間10億~20億円の交付金が出る。

 ある町民は声を潜めた。「町にはお金がない。何かやりたいですよ。けれど選挙前は決して口にできない。袋だたきに遭うから」

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 人口150万人を抱える福岡市の隣、福岡県旧二丈町(現・糸島市)でも05年春、一部の町議や町幹部らがNUMOの案内で茨城県東海村の原子力関連施設を視察。NUMO職員を招き、最終処分場に関する勉強会も町内2カ所で開いた。

 07年2月、一部報道で動きが表面化すると反対運動が激化。「議員や職員の個人的な学習だった」。当時の町長、筒井秀来は町議会で誘致を否定し、構想は霧消した。

 誘致に動いた当時の収入役、内場賢太郎(64)は「調査だけで20億円の交付金がもらえる。財政状況の厳しい町にとって大きかった」と漏らす。

 高知県東洋町では誘致を宣言した町長が選挙で敗れた。公募を始めた02年以降、誘致話が浮上し頓挫したのは全国で13自治体。このうち九州は旧二丈町、南大隅町を含め7自治体に上る。

 過疎や経済の衰退にあえぐ地域の有力者が起爆剤として誘致を模索し、NUMOが水面下で動く。表面化した途端、何も知らされていなかった住民の間で反対運動が起きる。同じことの繰り返しだ。札束をちらつかせて自治体の名乗りを待つ手法は限界にきている。

 袋小路に入り込んだ処分場の選定作業。そもそも、NUMOはどんな活動をしているのか-。

 (敬称略)

 ◆「安全神話」日本と同じ―映画監督 ミケル・マッセン氏

 使用済み核燃料の最終処分計画が世界で最も進むフィンランドだが、国民がもろ手を挙げて後押ししているわけではないという。最終処分関連施設「オンカロ」を描いた映画「100000年後の安全」で問題提起したデンマーク人、ミケル・マッセン監督(41)に聞いた。

 -なぜ、オンカロに興味を持ったのか。

 「最終処分は原発を持つ国すべてが解決しなければいけない。さらに10万年という人類で例のない長期間を想定した施設が必要だ。破壊されず維持できるか。日本も調べたことがあるが、地震の多発地帯で『立地は難しい』と指摘する地質の専門家に出会った」

 -なぜ、フィンランドは最終処分場を受け入れようとしているのか。

 「国民的な議論があったのか疑問が残る。原発で経済が成り立っているから『やるしかないじゃないか』、廃棄物も『処理するしかない』と。フィンランドは政府とか大企業が力を持っている国だ。そこが『ベスト』と言えばそれに従いがち。日本も似ていないか」

 -映画を撮る中で感じたことは。

 「オンカロを担うのは一般企業。企業は利益を求める。政府と違い、長期に物事を考えることが難しい。東京電力福島第1原発の事故も経済優先で対策を怠った結果ではなかったか。社会と民間企業が望むものが、一致するとも限らない」

 -フィンランドで日本のような「安全神話」を感じなかったか。

 「同じような感覚を受けた。日本の場合、安全、安全と強調してたくさん原発ができた。導入当初、廃棄物はそれほど問題にされなかった。将来は解決できるという楽観的な見方があったが、いまだ解決していない」

 「フィンランドでは、埋めてしまった後も将来世代に警告を続けるべきか真剣な議論がない。地下を見たいという人間の好奇心にかかわる問題。本当の脅威が、人間の好奇心であれば安全を担保できるのだろうか」

 -最終処分の解決策はあるか。

 「みんなで考え、最善策を見いだすしかない。フィンランドは自然災害が少ない国だが、断層が多い日本は、より困難かもしれない」

=2013/03/03付 西日本新聞朝刊=

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