さまよう核のごみ(3) 「脱原発派」外し

 作業着に着替え、専用エレベーターで3分。地下300メートルの研究坑道に入ると、側溝を流れる地下水の音が聞こえた。

 「構内で1日700トンほどの地下水が出ます」。研究員のリーダー、伊藤洋昭が説明する。

 岐阜県瑞浪(みずなみ)市にある日本原子力研究開発機構の東濃地科学センター。巨大な立て坑が地下500メートルまで掘られている。核のごみを埋める「地層処分」研究の最前線だ。

 ◆混乱恐れ対話を回避

 地下に高レベル放射性廃棄物を埋めた場合の自然環境への影響を調べている。特に地下水の動きがポイントだ。仮に廃棄物を入れた容器に何らかの異常が生じ、放射性物質が地下水に漏れ出したら地上の人間界に汚染が及ばないかどうか-。

 「廃棄物を埋設後、坑道を含む施設自体を再び土で埋め戻せば、岩盤は水を含んだ元の状態に戻る。地下水の動きは小さくなる」と伊藤。

 機構は、瑞浪をなし崩し的に最終処分場にはしない協定を地元自治体と締結し、2003年から掘削作業を始めた。坑道の総延長は現在1500メートル弱。「本物の処分場はすごい規模になる。総延長が200~300キロになるはずだ」

 こうした研究自体、あまり知られていない。

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 「放射性物質を外に漏らさず、何万年も埋められるのか」。参加者から素朴な疑問が飛んだ。

 2月9日午後、福岡市のホテルで開かれたワークショップ「高レベル放射性廃棄物って何のこと?」には、九州一円から25人が集まった。主催は、最終処分場の実施主体として国から認可を受ける原子力発電環境整備機構(NUMO=ニューモ)。電力会社からの出向者が約6割を占める。

 参加者はニックネームで呼び合い、グループごとに「地球防衛隊めんたいこ」などと命名。ヘルプカードが掲げられると、NUMO職員が「はい、ニューモマンです」とテーブルに駆け寄って疑問に答え、議論をサポートする。

 子どもじみた仕掛けに見えるが、難解な問題を身近に考える工夫という。NUMO広報部長の富森卓は「膝を突き合わせることが大事。こうした場を増やしたい」と話す。

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 NUMOは2000年の設立以降、最終処分場に関する広報活動や自治体関係者の視察などに約300億円を投入する予算を立て、実際に200億円弱を費やしてきた。元をたどれば電気料金だ。結果として候補地に応募したのは、07年の高知県東洋町のみ。それも推進派の町長が選挙で敗れ、吹き飛んだ。

 対話型ワークショップを全国で始めたのはそれ以降のことだ。ただ、公募せずNUMOに協力的なNPOの人脈に頼って参加者を集めた。「原発反対を主張されても議論がかみ合わないから」と広報担当者。明らかな「脱原発派」外しだった。

 「厳しい意見も正面で受け止めるべきだ」。そんな外部委員の提言を受け、公募に切り替えたのは本年度から。福岡市のワークショップでは参加者25人のうち、10人程度が公募で集まった。「議論が“炎上”するとか、場がぐちゃぐちゃになることはなかった」と広報担当者。NUMOのこれまでの判断は杞憂(きゆう)だった。

 核のごみ問題への国民の議論は深まっていない。最終処分場建設の前に、中間貯蔵施設の問題が間近に迫っているのだが-。

 (敬称略)

=2013/03/04付 西日本新聞朝刊=

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