さまよう核のごみ(特集) 世界の最終処分場計画

フィンランドにある使用済み核燃料の最終処分の関連施設「オンカロ」入り口(地下に向かう中央の道路の先)。奥にある赤色の建物はオルキルオト原発(同国のポシヴァ社提供) 使用済み核燃料の最終処分の関連施設「オンカロ」の地下50メートル付近=1月中旬、フィンランドのオルキルオト

 核分裂のエネルギーを利用し、電気を大量に造り出す原子力発電所。東京電力福島第1原発事故以降も、電力需要が拡大する新興国中心に世界で建設計画が相次ぐ。だが、原発を動かせば必ず生じる使用済み核燃料の最終処分場の立地にめどがついている国は少ない。高い放射線量の核のごみは、数万年以上にわたって人間界から遠ざける必要がある負の遺産。地中に埋める地層処分の安全性への不信はぬぐえず、適地選びは各国で迷走している。各国の最新事情をまとめた。

 ◆米国―安全審査を白紙に

 世界で最も多い104基の原発を抱える米国では、立地環境からいち早く西部にあるネバダ州ユッカマウンテンが候補となった。原発の安全性を監督する政府の独立機関、原子力規制委員会(NRC)の最終的な安全審査を待つまでにこぎ着けていた。ところが2009年に発足したオバマ民主党政権が白紙に戻した。ネバダ州の民主党有力議員が「地元には造らせない」と強く主張したことが背景にあるという。

 これを受け、エネルギー省(DOE)は1月、48年までに地層処分場の設置を遅らせる新たな処分戦略を公表した。一方、政府から審査のための予算を凍結されたNRCは、DOEの審査取り下げ申請を認めず、手続き上は「審査中」とする何とも分かりにくい状況になっている。海外の核のごみ事情に詳しい原子力環境整備促進・資金管理センター(原環センター、東京)の稲垣裕亮(ゆうすけ)氏は「共和党政権になると再びユッカマウンテンが選ばれるかもしれない」と指摘する。

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 英国の適地選びの行方も不透明だ。関心を示していた、イングランド北西端のカンブリア州の2市が市議会で次の机上調査(第4段階)に進むことを1月末に可決したものの、地域振興などの法的な担保がないなどとして、上部の州議会が反対多数で否決したのだ。

 適地決定には州・市双方の同意が必要。州議会の否決により手続きは頓挫したことになる。

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 33基の原発が稼働する原子力大国ロシア。11年にようやく「放射性廃棄物管理法」が制定され、具体的な処分計画について検討を開始。シベリア中部のエニセイスキーに地下研究所を設置し、最終処分もする案が浮上している。ロシアは再処理工場で使用済み核燃料を処分する方針。だが、運営がうまくいかず再処理できているのは発生量の16%止まり。残りは中間貯蔵施設などで保管している。

 ◆中国北西部で有力地 韓国は遅れ気味

 隣国・中国、韓国の動向はどうか。

 中国は2012年末時点で15基の原発が稼働中で28基を建設中。最終処分場は、日本より早い1986年から候補地の選定を始めた。現在は全国で五つの候補地が残っており、特に西北部の甘粛省北山地域ではボーリングを含めて集中調査が行われている。政府は使用済み核燃料を再処理し、日本と同様にガラス固化体にして地層処分する方針。06年に公表した計画には、処分開始時期を「41年から今世紀半ば」と明記している。

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 韓国では12年末時点で23基の原発が稼働。日本同様に使用済み核燃料の再利用を目指す核燃料サイクル政策を進めたい意向があるが、日米原子力協定で日本に対して同政策実施を認めた米国からお墨付きを得られず、実現していない。使用済み核燃料の最終処分については、その方法も定まっていない。

 12年11月に政府の知識経済部が策定した計画では14年までに処分方針をまとめる予定。それを踏まえて候補地探しも動きだすとみられ、世界の中でも遅れ気味だ。

 ◆「貧困地」に立地 世界的な傾向

 適地選びの進め方に世界的な傾向はないのか。

 日本の場合、基本的に市町村から手を上げてもらう公募形式。原環センターによるとフランス、英国、カナダなども公募だ。フィンランドやスイスは地質的に安定したエリアを国が承認し、自治体側に申し入れて了解を得るやり方をとってきた。

 候補地については、フィンランドとスウェーデンが原発のそば。カナダの候補地もウラン鉱山を含めた関連施設がある場所で、原子力施設の安全面について他地域より理解があるところだった。逆に、フランスやドイツは、岩盤の安定度など立地条件を重視し、関連施設のない自治体の理解を求めながら有力な候補地を絞り込んできた。

 “究極の迷惑施設”ともいえる高レベル放射性廃棄物の最終処分場。原環センターの江守稔氏は「受け入れる自治体が地域振興の見返りを期待するのは世界で共通している」と指摘する。都市部ではなく、人口が少なく産業の育っていない貧しい地方が候補地の前提となっている。

(竹次稔)

=2013/03/02付 西日本新聞朝刊=

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