【九電 九州考】(3)の1 域外供給、6年で1件

九州電力が電気を供給しているイオン宇品店=昨年12月28日夕、広島市南区 拡大

九州電力が電気を供給しているイオン宇品店=昨年12月28日夕、広島市南区

 2011年末の夕暮れ、広島市郊外にある大手スーパー、イオンの宇品(うじな)店。正月の支度をする買い物客でごった返す同店に、電気を供給しているのは、地元の中国電力ではない。九州電力だ。

 電力各社は各地域に独占的に電気を供給しているが、政府は電力会社同士の価格競争を促すため、05年4月から、一定規模以上の電気を使う大口の利用者には域外供給が実質的に自由にできるようにした。同年11月、九電は宇品店に全国初の域外供給を開始。電力各社の地域独占に風穴をあける動きとして当時、大きな注目を浴びた。

 しかし-。

 「宇品店はどれくらいの電気料金になるか、提示してくれませんか」

 05年、千葉市のイオン本社を訪れた九電幹部に、イオン側が強く求めてきた。電力自由化時代に入り、九電は九州内にある取引先を特定規模電気事業者(PPS)に奪われないよう、首都圏の大企業本社などにトップセールスを展開していた。流通業界では価格競争が激化。イオンは経費を削るため、少しでも安い電気をほしがっていた。

 事情を知る関係者によると、「電力各社には仲間同士、足を引っ張るのはやめましょうという不文律がある」という。PPS封じをもくろんだはずが域外供給を迫られ、九電幹部は戸惑った。そして、イオンに料金を提示する前に、中国電にイオンの話を伝え、宇品店の電気料金を下げるよう促した。

 だが、中国電は下げなかった。「大口の業務用全体の電気料金値下げにつながることを嫌った」と、この関係者はみる。

 結局、原発比率が高く、大口の電気料金の安い九電がイオンに提示した料金は、中国電を下回り、九電は宇品店に電気を供給することになる。

 その後、経済紙が「九電が全国初の域外供給」とスクープして周知の事実になると「電力各社から九電は何でそこまでするのかと陰口をたたかれた」(関係者)という。

 九電の域外供給は昨年12月上旬現在、イオン宇品店1件のみ。イオン側も、電力会社に域外供給を実現させたのは全国で宇品店だけ。イオン関係者は「電力会社は『域外供給はやめて』とプレッシャーをかけ合っている」といら立つ。

 電気の小売りは2000年以降、自由化が段階的に進み、工場やオフィスなど大口向けに広がってきた。電力会社を自由に選べる利用者は販売電力量の6割に達する。だが大手の域外供給だけでなく、PPSの参入も進んでいない。PPSから電気を買っているのは九州では全体の約1%にすぎない。

 PPSは自家発電を使う工場などから余った電力を買うなどして電気を調達し、販売する。あるPPS幹部は「慢性的に供給力が足りない」と明かす。発電施設を建設するにも巨額の投資が必要で、採算性から簡単にはいかない。電力各社の送電線料の高さも競争力を低下させているという。

 電力不安が高まった昨夏。あるPPSの担当者は、電気購入を希望していた福岡県内の企業を訪れ、断りを入れた。

 契約へ調整を続けたが、九電に対抗できる価格で企業側が求める電力量を確保できなかった。

 「制度上は自由化されているが、実体はまだまだ大手の独占」

 PPS関係者は口をそろえる。

 九電に、ライバルはいない。

=2012/01/03付 西日本新聞朝刊=

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