【九電 九州考】(4)提供番組、近くゼロに

九電出身の社長が経営再建に取り組む博多座=福岡市博多区下川端町 拡大

九電出身の社長が経営再建に取り組む博多座=福岡市博多区下川端町

 笑いあり、涙ありのドキュメンタリーテレビ番組「窓をあけて九州」。RKB毎日放送など九州のJNN系列各局が制作し、1979年に放送が始まった。毎週日曜午前10時から。放送1600回を超える長寿番組だ。

 昨年10月、関係者に衝撃が走った。九州電力が2011年度末で、単独スポンサーを降りると通知してきたのだ。九電は放送開始以来、単独スポンサーを務めてきた。番組が存続できるか関心が集まる。RKBは、九電の撤退について「契約上のことなのでコメントできない」としている。

 九電は67年から、同様の「提供番組」を手掛け、現在は「窓をあけて九州」を含め6番組が放送されている。全系列にあり、九州の関連放送局は23局に上る。九電は11年度末で、その全てのスポンサーから降りる。

 「提供番組こそ一流企業の証し。いい番組を流した後にCMでわれわれのメッセージも伝えられる。意味があった」

 九電OBは悔しさを隠さない。

 原発の全6基停止に伴い、石油火力など代替の発電所の燃料費が1日約10億円増えた九電。11年度は巨額の赤字が避けられない。提供番組経費の年間数億円の削減は焼け石に水だが、九電は「収支悪化を少しでも改善するため」(報道グループ)としている。

 経費に利益を上乗せする「総括原価方式」で決められる電気料金に、厳しい視線が注がれ始めた。九電関係者は「新年度以降も広告費を増やせる状況にはない」と話す。

 これまで地域は物事が袋小路に入ると、人材も資金も豊富な九電に頼ることが少なくなかった。

 福岡市博多区の博多座。歌舞伎専用の花道を備え、歌舞伎のほか演劇、ミュージカルなど超一流の文化発信拠点だが、近年集客に陰りが見える。

 本来は26・6%を出資する筆頭株主で施設を所有する福岡市に経営責任がある。だが今、再建を一手に担うのは、市に次ぐ11・5%を出資、設立にも深く関わった九電の元副社長、芦塚日出美氏だ。「経営力があり、経済界に顔が利く芦塚さんが頼み」。関係者は口をそろえる。

 芦塚氏は改革を進める。北島三郎さんの公演でも出演料の値引きを実現。今月7日からは若者に人気のアイドル、堂本光一さんが主役のミュージカル「SHOCK」(ショック)を始める。博多座初のジャニーズ事務所公演でチケットはすぐに完売した。

 それでも、11年度全体では震災の影響もあって不入り。2年連続の赤字に陥る公算が大きい。

 「博多座をよろしくお願いします」。芦塚氏は昨夏、九電の松尾新吾会長など主要株主に支援を要請して回った。だが古巣・九電は「経営難」を理由にチケット購入を見送った。一方多額の借金を抱える福岡市幹部は「行政が財政で支援する時代でもない」と話す。

 来季からサッカーJ2で戦うアビスパ福岡も、博多座同様、九電出身者が社長を務めていた時期がある。しかし、クラブ運営をめぐってサポーターと対立し、10年3月、経営陣を刷新。今、九電からの資金援助もどうなるか見通しが立っていない。その中で鹿児島市出身で選手時代、熱いプレーで「男・前田」と呼ばれた前田浩二氏を新監督に迎え、地域密着を掲げて必死にクラブを立て直そうとしている。

 地域の「財産」を自治体や九電に任せればいい時代は過去になりつつある。

=2012/01/04付 西日本新聞朝刊=

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