【九電 九州考】(5)公営企業かすむ倫理

佐賀県の古川康知事の資金管理団体「康友会」の政治資金収支報告書のコピー。九電幹部からの個人献金が確認された 拡大

佐賀県の古川康知事の資金管理団体「康友会」の政治資金収支報告書のコピー。九電幹部からの個人献金が確認された

 ゼネコンの男性社員は、九州電力をめぐる「逸話」を教えてくれた。

 九電のある支店が発注した工事。請け負った別のゼネコンが九電側から依頼を受けた。九電幹部の親族企業を下請けに入れてほしい-。ところが、ゼネコンはこれを受け入れず別の業者を採用した。以後数年間、このゼネコンは九電から工事を取れず、現場の所長は更迭されたという。

 男性社員が勤めるゼネコンは九電元会長の親族企業と取引がある。「下請けに入れても施工せず、利益を抜くだけ。こちらのもうけは減るけど仕事がなくなるよりマシ」

 九電の松尾新吾会長が社長に就いたのは2003年。その翌年以降、松尾氏の「いとこの子」が創業した建設会社が、九電関連工事の下請けで急激に受注を伸ばした。松尾氏が社長就任前後に元請けのゼネコンに直接連絡し、同社を紹介したことを認めた。

 松尾氏は「口利きではない」と否定するが、複数の建設業者は言う。「九電は大事なお得意さま。支店長クラスに頼まれても断れない」

 年間設備投資が2千億円を超える九電。その資金力の「源泉」は家庭から徴収する電気料金だ。法律に守られた地域独占企業だからこそ、より厳しい企業倫理が求められるのではないか。

 親族企業との取引について、東京電力は取材に「禁止している」と回答。中国電力は制限規定を設けていないが、役員の2親等以内の親族が経営する企業との取引は開示を義務付け「透明性を確保している」という。

 九電に禁止規定はない。「取引企業は品質や価格、経済合理性を基に選んでいる」。報道グループはこう説明するが、ゼネコンの元社員の証言は少し違う。「九電担当は遊び上手じゃないと務まらない」

 元社員は九電の発注担当部門の社員を接待していたという。福岡・中洲の高級クラブに連れ出し、ゴルフもマージャンも付き合う。しかも上手に負けないといけない。支払いはゼネコン持ちだ。

 「コネがないと仕事は取れない」。接待費は受注した工事の追加代金に紛れ込ませて九電側に請求してきた。

 積もり積もった経費は最終的に電気料金に跳ね返っているかもしれない-。元社員はゼネコンを辞めた今、そう思う。

 「不透明さ」は政治との関係にもうかがえる。

 昨年11月に公開された2010年の政治資金収支報告書。自民党の政治団体「国民政治協会」の寄付者欄には九電会長や社長、副社長、部長の名前がずらりと並ぶ。その数約50人。九電の寄付金の総額は約250万円に上る。電力会社は1974年に企業献金をやめた。実際は、幹部による組織的な個人献金が慣例化。役職別の相場まで決まっていた。

 佐賀県の古川康知事も九電佐賀支店(現佐賀支社)の歴代支店長らから06年以降毎年、個人献金を受けていた。03、07、11年の知事選では、選挙カーの運転や支持者への電話作戦など手厚い「人的支援」も受けた。

 やらせ問題に関する九電の第三者委員会は自治体首長との「不透明な関係」の根絶を求めた。九電は再発防止策として、自治体首長への個人献金や政治資金パーティー券の購入・仲介中止を打ち出した。「(第三者委の提言を)百パーセント近く受け入れた」。真部利応(まなべとしお)社長は会見で胸を張った。

 ただ献金・パーティー券購入禁止の対象に国会議員は含まれていない。

=2012/01/05付 西日本新聞朝刊=

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