【九電 九州考】(6)の1 変わらぬ国との“主従”

電力会社の監督官庁、経済産業省の本館=5日、東京・霞が関 拡大

電力会社の監督官庁、経済産業省の本館=5日、東京・霞が関

 「九州電力の真部利応(まなべとしお)社長は近々辞任することになるでしょう」

 昨年末、真部社長が記者会見して辞任を表明する数日前、経済産業省資源エネルギー庁のナンバー2である次長は、九電のやらせメール問題をめぐる第三者委員会元委員長、郷原信郎弁護士の事務所を訪れ、こうささやいた。企業にとって社長の進退は極秘事項。それが国に事前に伝わっていた可能性がある。

 電力会社は民間企業である一方、地域に電力を独占的に供給する公益事業者として細かく国に監督される。国には人事に介入する権限はない。だが九電のある中堅幹部は、「社長交代という極秘事項だからこそ、誰が辞め、誰が就くのか、事前にエネ庁につぶやくのが慣例」と明かす。そこには国と電力会社の、主従関係が浮かび上がる。

 九電には他の電力会社同様、経産省OBが天下りしている。受け入れは1962年から。国の原発導入決定を受け、九電でも原発立地点の選定に着手したころに重なる。

 計7人の経産省OBが九電入りし、うち6人が取締役、3人が副社長に就いた。現在も執行役員が1人いる。九電関係者は「国とのパイプ役であるとともに、社内情報を常にグリップ(把握)する存在」という。

 国策として進められてきた原発政策。電力会社は、いわば実動部隊だ。

 「あの番組はどこの主催か考えろ! うちが好きでやるわけがない!」。やらせメール問題発覚直後、九電役員OBが旧知の記者にいら立ちをぶつけた。

 問題の舞台となった玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働の是非を問う番組は、経産省が企画した。九電の社内調査も、第三者委調査も、番組放送の数日前、エネ庁担当者が九電社員に「発電再開の意見を出すように手配してほしい」と要請したことを確認している。

 ただ、要請時期が、九電社員が再稼働を支持するメール投稿を取引会社などに求めた後だったため、追及されなかった。

 九電の問題発覚後には、電力各社の原発説明会などで、経産省が動員を要請していたことが相次いで明らかになった。経産省の第三者委員会は昨秋まとめた報告書で国には「(電力会社が)依頼に対応してくれるとの意識」があり、電力会社にも「必要以上に国の意向を忖度(そんたく)」する土壌があると分析した。

 九電のやらせ問題では、佐賀県の古川康知事の発言が問題の発端かどうかに注目が集まったが、九電が原発の再稼働を求める国の意向を忖度したことが大きかったのではないか。

 民主党政権の原発再稼働の方針は迷走した。昨年6―7月には、経産省は玄海原発の再稼働にゴーサインを出したが、当時の菅直人首相は「OK」を出さなかった。

 真部氏は、監督官庁が認めている以上、電力会社の判断で再稼働できると決意。「自分の辞任と引き換えの再稼働表明」をひそかに検討していた。政権への意を決した「反乱」だった。

 その後菅氏は、再稼働の条件として「安全評価」の導入を表明。再稼働は首相らの政治判断に委ねられることになり、反乱は見送られた。政策がぶれる政権への不満は九電内にくすぶる。だが今、ある首脳は言う。

 「電力会社は国の政策に従わざるを得ない」

=2012/01/06付 西日本新聞朝刊=