【トップ交代】(上)異論に耳傾け再生を

瓜生道明新社長(右端)と貫正義新会長(右から2人目)を紹介する松尾新吾会長(同3人目)。左端は真部利応社長=1月12日午後4時、福岡市中央区 拡大

瓜生道明新社長(右端)と貫正義新会長(右から2人目)を紹介する松尾新吾会長(同3人目)。左端は真部利応社長=1月12日午後4時、福岡市中央区

 九州電力内外を驚かせたトップの同時交代は、約10分間の取締役会で全会一致で正式決定した。

 12日午後、九電本店。松尾新吾会長は自らの辞任と貫正義副社長の就任案を全取締役に示した後、真部利応社長の後任案は示さず、意見を募った。ある副社長が瓜生道明副社長を推薦し、了承された。真部氏は、ひと言も話さなかったという。

 瓜生氏は、同じ技術系の真部氏が当初から意中にあった本命だ。しかし真部氏は記者会見で、あえて複数に後継を打診したことを明かした。
 社内では、松尾氏が推すのは他の取締役との見方が大勢だったが、松尾氏は会見で「社長と意見は割れていない」と一蹴。中堅社員は「引責辞任する社長が後継指名したとなると世間の批判を集めかねない。会長は社長を擁護した」とみる。

 「社長と私は二人三脚でやってきた」

 松尾氏は同日の会見で、真部氏との関係をこう振り返った。同時辞任は、松尾氏が2007年に末席取締役だった真部氏を社長に抜てきした「任命責任」を取ったといえる。

 「私も社長5年目です。会長の任命責任はありません」。昨年末、辞任の意向を固めた真部氏は、同時辞任を主張する松尾氏に翻意を求め続けた。それは真部氏の“独り立ち”したとの自負だった。だが松尾氏は譲らなかった。「大きなリスクを背負って指名した」という松尾氏の意地でもあった。

 だからこそ、なのか。松尾氏は“最後”の会見で真部氏を守り続けた。

 「やはり最適な社長を選んだ。間違いなかった」「(メール問題の)対応も自ら先頭に立って努力したと評価している」。隣に座る真部氏の目はその瞬間、潤んだ。

 しかし、彼らの「二人三脚」は、結果的に独走を招いた。その象徴がやらせ問題の対応だ。

 「社長を支える側がなぜそんなことを言うのか」。第三者委員会元委員長、郷原信郎氏との対決路線に走る真部氏に対し会長として翻意を促すよう求めた幹部に向かって、松尾氏は逆にこういさめたという。昨夏には、ある取締役が辞任届を提出する騒動もあった。

 別の幹部は「社長は異論に耳を傾け、取り込むことが苦手。次第に口をはさみにくい雰囲気になっていた。それを会長は追認した」と語る。

 一方、後継の瓜生氏について、ある部下は「議論好きで若手にも意見を求めてくる。厳しいが意見が言いやすい」と歓迎した。瓜生氏自身、会見でいみじくも「自分たちの施策を社員の腹に落ちるような説明をしないとついてこない」と言い切った。企業風土改善が喫緊の課題との認識からだ。

 この姿勢はそのまま、原発再稼働などをめぐりさまざまな意見がある地域住民や自治体に対しても求められている。社内でも社外でも、「異論」と向き合うことからしか、九電の再生と地域の信頼回復はない。

     ◇

 九電が会長・社長の同時交代を発表した。狙い通り信頼回復につながるのか。九州経済にどんな影響を及ぼすのか。

=2012/01/13付 西日本新聞朝刊=

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