【トップ交代】(下)地場財界も変革必要

2月の完成が近付く電気ビル「共創館」。九州経済連合会など主要経済団体が入る。右の建物は九州電力本店=1月13日、福岡市 拡大

2月の完成が近付く電気ビル「共創館」。九州経済連合会など主要経済団体が入る。右の建物は九州電力本店=1月13日、福岡市

 大手電力会社10社の取締役名簿を見ると、九州電力の異様さに気付く。九電だけ、50代の取締役がいないのだ。73歳の松尾新吾会長と66歳の真部利応社長も、会長・社長の中で最高齢だ。

 新社長に就く62歳の瓜生道明副社長は真部氏より年齢で4歳、入社年次で7年下と若返った。それでも、業界ではやっと平均的な年齢だ。

 「若き実力者」「若い力」。松尾氏は12日の記者会見で、若返りを繰り返し強調したが、社内には冷ややかな声もある。「あれだけの不祥事があったのに、順当な人事だった」(中堅社員)

 なお際立つ経営陣の高齢化が、社内の閉塞(へいそく)感や企業体質の硬直化を招き、柔軟な発想が生まれにくい土壌となっていないだろうか。新たなトップ2人には、松尾氏と真部氏の影響力からの“自立”が問われている。

 九電のトップは、九州経済界の「顔」としての役割を果たしてきた。

 中核的な経済団体、九州経済連合会の歴代会長には1961年の創立以来、九電会長が就く。年間数億円の資金やスタッフの提供だけでなく、地域の声を吸い上げ、調整し、ときには中央との折衝もこなせる幅広い人脈も必要だ。「顔」には、大きな負担が伴う。

 九電では初めて、副社長から会長に就く貫正義氏は同日の会見で、「社長経験がなく、経済界活動もまだ駆け出し。松尾会長にご指導いただく」と述べ、“松尾氏頼み”を率直に語った。

 地元経済界には、松尾氏の会長辞任が、九州での九電の求心力低下につながるとの見方があるが、松尾氏が相談役に退いた後も九経連会長を続ける考えを示したことに、複数の主要企業首脳は「正直ほっとした」と漏らした。荷が重すぎるとみているのだ。

 地元経済界から、次を担う「われこそは」の声は聞こえてこない。

 松尾氏や、前会長の鎌田迪貞相談役は以前から、「九経連会長は九電の指定席ではない」と公言してきた。2人は実際に、他の主要企業首脳に後継を打診もしている。

 しかし、松尾氏は12日の会見でその持論を示しつつ、産学連携強化など松尾氏肝いりの事業に触れ、「手応えを感じながら仕事をしている」と意欲を見せた。

 九電幹部からも「松尾氏には九経連会長を5年くらいやってもらえばいい」との声が漏れる。2月末、福岡市の九電本店の隣に、14階建ての大型ビルが完成する。九電子会社が建設し、九経連や福岡経済同友会など主要経済団体が移転・入居する予定だ。お膝元に「財界ビル」が建つ風景からも、九電が本気で「顔」を他社に譲ろうとする気配は感じにくい。

 だが、九電を取り巻く経営環境は厳しさを増す。政府は脱原発政策にかじを切り、地域独占にもメスを入れつつある。九電が、九州経済界をリードするだけの豊富な資金力と安定的な経営を、今後も続けられるかは不透明だ。

 急速な円高など九州経済全体が大きな変化にさらされるいま、九電依存のままの経済界でいいのか。ある主要企業首脳は、こう覚悟する。「九電が力を持てなくなって初めて、どれだけ地域に貢献してきたかが分かる。そのときはみんなで負担を分担するしかない」

=2012/01/14付 西日本新聞朝刊=