【九電大解剖】(2)力の源泉は電気料金 寄付金や福利厚生も上乗せ

やらせメール問題に揺れた九州電力の本社=福岡市中央区

 電力会社の「力の源泉」は、一定の利益が約束されている電気料金の算定方法にある。「総括原価方式」と呼ばれる仕組みで、必要経費に利益を上乗せした「総原価」と、料金収入が一致するように電気料金を決めることができるのだ。原発が長期間停止する非常事態がなければ、必ずもうかる仕組みで、地域に根を張る「九電マネー」を支えている。

 「総原価」は、発電や送電に必要な費用を積み上げた「営業費」と、配当金や支払利息などになる「事業報酬」から、他社への販売電力料などを差し引いて計算される。「営業費」は、燃料費や人件費、修繕費などで構成され、「事業報酬」は、発電所や核燃料など保有する資産に3%を掛けて算出する。3%は、発電所を建設する際などに資金調達した金利を基に算出したという。

 普通の民間企業では、商品がどの程度売れるかなどを見積もってコストを調整。販売が想定を下回れば、赤字にもなる。だが、九電の場合は、まずは必要な費用を積み上げ、その後に利益が出るように電気料金を決めることができる。電力の安定供給のために、安定的な経営を担保することがこの方式の名目だ。

 九電の電気料金(2008年9月改定)では、国に届け出た「総原価」は1兆3673億円。このうち、最も多い費用は燃料費(3161億円)で、減価償却費(1955億円)、修繕費(1944億円)、人件費(1334億円)と続く。

 九電は、発電所が立地する自治体や各種団体などに多額の寄付をしているが、寄付金も営業費に含まれている。社員の福利厚生施設の建設費やオール電化の宣伝広告費なども営業費に計上。寄付金も福利厚生費も、発電に必要な経費として電気料金に上乗せされているのだ。

 ただ、東京電力の経営状況などを調べる政府の第三者委員会は、東電が過去10年間で計約6千億円の費用を過大計上していると指摘。原価について「電気の安定供給に真に必要な費用に限定すべきだ」と言及し、総括原価方式のあり方を見直す動きが始まっている。

 経済産業省は11月、電気料金制度・運用を見直す有識者会議を発足させ、議論を始めている。年明けにも結論を出す方針で、枝野幸男経産相は「これまでのしがらみにとらわれず、ゼロベースで議論してほしい」と述べている。

 同第三者委は、資材調達や工事発注などに非効率が存在すると指摘し、関係会社との取引の甘さにも踏み込んでいる。電力会社を発電会社と送電会社に分ける「発送電分離」の検討も提言した。

 電力各社は「費用は適正に見積もっている」と反論しているが、電気料金の基となる経費への厳しい視線は、他電力に波及するのは必至だ。九電もさらなる経営効率化を迫られる可能性があり、「九電マネー」にも影響があるかもしれない。

 ●九州唯一の1兆円企業 競争がなく安定的に推移

 ▼売上高 九電は九州で唯一、売上高が毎年1兆円を超えている。地域独占に守られて競争がほとんどなく、過去10年は、1兆4千億円前後を安定的に推移している。電気は生活や経済活動に欠かせないインフラで、景気にも左右されにくい。

 2010年度でみると、連結売上高は1兆4860億円。このうち家庭や商店などからの電気代が5914億円で全体の約4割を占めた。工場やオフィスなど大口からの電気代が7345億円(約5割)で、この割合は毎年変わらない。

 利益も「総括原価方式」であるため、毎年、安定して黒字を計上。経常利益は、ここ5年は1千億―500億円程度で推移しており、他の有力地場企業と比べても、九電の安定した経営は際立っている。

 07年度に1度だけ売上高が1兆円を超えたトヨタ自動車九州(福岡県宮若市)は、翌年にはリーマン・ショックによる販売不振で3割も減収となり、赤字に転落。競争の激しい家電販売業界のベスト電器(福岡市)は、売上高が年々減少し、店舗や人員の大規模なリストラを余儀なくされている。

 ●年間2000億円維持

 ▼設備投資 設備投資額が九電の巨大さを物語る指標の一つだ。一時期より減ってきたとは言え年間2千億円台を維持し、1社で九州内の民間設備投資の3割弱を占めるほどだ。

 2010年度の実績総額は2369億円。このうち、比率が約41%(987億円)と最も高いのは「流通」と呼ばれる、発電所からの電気を運ぶための送電や配電設備。

 火力など発電所関係は約33%(788億円)で、原子力がこのうち416億円を占める。ちなみに、新設計画がある川内原発(鹿児島県薩摩川内市)3号機の建設費は約5400億円にも及ぶ。

 これらの事業を多くの取引企業が支えている。東京商工リサーチ福岡支社によると、九電の1次取引先は1151社、2次取引先は4769社。取引業者で組織する親睦団体があり、「九電商友会」と呼ばれている。九電との取引は、地元企業の信用力を高める効果もある。

 6月発生の「やらせメール」問題でも、佐賀支店(当時)から取引会社に投稿を依頼していたことが明らかになった。この圧倒的な地位を利用しての要請だった。

 ●総額1000億円 10年度

 ▼税金  九電は2010年度、総額で約1千億円の税金を国や自治体に支払っている計算だ。

 特に大きいのが固定資産税の332億円。これは既存の原子力、火力発電所のほか、鉄塔や送電線などの資産価値に応じて課せられる地方税。立地自治体の財政を最も潤しているとされる。

 この恩恵を受け、原発を持つ佐賀県玄海町や火力発電所がある熊本県苓北町などは周辺自治体と合併せず、比較的裕福な財政運営を続けられている。

 これと同額で、電源開発促進税がある。電力会社が販売電力量(1キロワット時当たり37・5銭)に応じて利用者から徴収しており、九電の場合はモデル家庭で年間約1350円。全国総額は年3000億円超となり、それが電源立地自治体の振興などに当てられる仕組み。

 このほかに、都道府県が売上高に対して課す事業税も159億円と大きな比率を占めている。

 ●取締役の平均4600万円 社員の平均は828万円

 ▼年収 九電社員の2010年度の平均年収は828万円で九州でトップクラス。福岡県に本社を持つ上場企業をみると、同年度に年収が700万円を超えたのは、九電を含めて5社程度しかない。

 エネルギー企業としてライバルの西部ガス(福岡市)とは年収約200万円、地場大手と言われる西日本鉄道(同)は約330万円もの開きがある。ちなみに、大手の東京電力(809万円)、関西電力(806万円)も上回っている。

 取締役17人に対する報酬(賞与を含む)は同年度は総額で7億9500万円、平均で1人当たり4600万円に上った。

 一方で、支社や発電所など拠点があるところに社宅、寮が用意されているなど福利厚生も充実。大分県別府市などに保養施設を有している。

 【注】イラストのデータは九電を含む各社の有価証券報告書、公表資料、東京商工リサーチの調査などを基に作成した。

=2011/12/30付 西日本新聞朝刊=

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