【問う語る】(4)の2 不毛な二項対立超えて 石油天然ガス・金属鉱物資源機構・石井彰特別顧問

▼いしい・あきら新聞記者を経て石油公団(現石油天然ガス・金属鉱物資源機構)入団。天然ガスなどの国際分析が専門。同機構首席エコノミストなど歴任し、現在は特別顧問。近著に「エネルギー論争の盲点天然ガスと分散化が日本を救う」(NHK出版新書)。東京都出身。61歳。 拡大

▼いしい・あきら新聞記者を経て石油公団(現石油天然ガス・金属鉱物資源機構)入団。天然ガスなどの国際分析が専門。同機構首席エコノミストなど歴任し、現在は特別顧問。近著に「エネルギー論争の盲点天然ガスと分散化が日本を救う」(NHK出版新書)。東京都出身。61歳。

 最近、大手マスコミの内部勉強会にも呼ばれる。そこで、原発擁護派と再生可能エネルギー推進派で繰り広げられている「二項対立」の不毛さを強く説く。まずは、再生可能エネルギー。「とてもエコとは言えない」と批判する。

 「太陽光発電と同じ出力を出すのに必要な地表面積は、天然ガス発電だとその2千―3千分の1で済む。無理に太陽光パネルを設置しようとすると膨大な面積が必要となり、その陰となる生態系を破壊する。傾斜地に多い休耕田に設置するなど論外。植物が育たず、土砂崩れの恐れが強まる。太陽光は屋根に設置するのが現実的だが、今後増やせても原発1基分ぐらいにしかならない」

 「風力発電も周辺に低周波音を出す。送電線を引くのに森林伐採もかなりある。ともに、ある程度推進すべきだが、原発を代替する救世主になるのは難しい」

 太陽光などの導入で国内メーカーが生産増で潤うという成長戦略も幻想という見方だ。ドイツでは低価格で販売している中国メーカーが市場を席巻し、国内企業がつぶれそうな状態という。

 「エネルギー組み合わせの鉄則は『一に多様化、二にも多様化』。脱原発を代替する主力は、天然ガス以外にない。野球に例えるならホームランは少ないが三振、凡打も少ない高出塁率の3番バッター。それを4番に上げるべきだ」

 「天然ガスのエネルギーを繰り返し利用するコンバインドサイクル発電だと発電効率は特に高い。二酸化炭素の排出量が石炭火力の3分の1に減る。新型『シェールガス』なども世界で次々と発見され、埋蔵量は400年分以上。工場など産業用のコージェネレーション(熱電併給)システムを組み合わせて、廃熱も活用するのが理想だ」

 とはいえ、天然ガスの調達量を増やし、使用比率を引き上げる主体は誰か。それは、世界的に見ても巨大な電力各社しかないという。だが、九州電力などの動きは努力不足に見える。

 「日本のLNG(液化天然ガス)購入単価は世界一高い。英国熱量という特殊な単位(BTU)を使うと、日本は100万BTUを平均16ドルで購入しているが、シェールガス革命で供給余力が出ている米国で最近、6・5ドルという格安のも出た。売り出されたのは『サビーンパス』というLNG基地。韓国勢は大量に購入していったが、日本勢はゼロ。誰でもホームランが打てるど真ん中の絶好球を見逃した。またいずれ、原発が復権するという下心が動きを鈍らせているのではないか」

 「日本にはパイプラインが届いておらず、各国に足元を見られて高価格で買わされていることは確かにある。だが、購入権益を自ら獲得するなど、買い方を工夫すれば九電なども安い天然ガスはまだ手に入れることは可能だ。電力自由化で価格競争にさらされている欧州などの電力会社は、すでにそうしている」

 エネルギーを海外に頼ると安全保障上、問題があるという指摘も決定的に間違っている、と喝破する。

 「日本の計画停電は、海外からエネルギー供給を止められたからではなかった。原発推進と電力システムに根本的な問題があった。アラブ諸国の政情など関係していない。『原発が準国産だから安定供給できる』というのも幻想だったことが、今回の事故は示した。国産をむやみに追求せず、調達資源の顔触れを多様化し、一定量の備蓄も整備する。それがエネルギー安定供給の要諦だ」

=2012/03/03付 西日本新聞朝刊=