原発の労働現場から(上) 事故時、危うい指揮

九州電力が実施した原子力事故の訓練。指揮命令ができない子会社社員と一体となって作業が行われていた=2012年10月、佐賀県玄海町の玄海原発(画像の一部を加工しています) 拡大

九州電力が実施した原子力事故の訓練。指揮命令ができない子会社社員と一体となって作業が行われていた=2012年10月、佐賀県玄海町の玄海原発(画像の一部を加工しています)

 原子力エネルギーを重要電源と位置付ける安倍政権は、原子力発電所の再稼働に意欲を示す。だが原発の課題は安全対策、重大事故時の避難の備え以外にも山積する。原発の労働現場では、危険性の高い作業は電力会社社員ではなく、外部の請負労働者が担ってきた。人手は電力会社から元請け、下請け、孫請け…と重層的な請負体制で確保され、指揮命令系統は複雑だ。こうした構造で、事故の際に労働者の身は守れるのか。迅速な対応は可能なのか-。改善点を探った。

 ◆下請けには命令できず

 「これからケーブルを接続する!」

 2012年10月末。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)3号機の横でグレーの作業服の九電社員が、13人の「部下」に号令を掛けた。その中には、小豆色の作業服を身に着けた九電の主要子会社、西日本プラント工業の社員も交じっていた。

 事故で全電源が喪失したと想定した訓練。発電機車から電流を流す作業などが報道陣に公開された。両社の社員がケーブルを一緒になって走りながら引っ張り、原発につないでいく-。

 事業者が労働者を自らの指揮命令下に置くには直接雇用するか、派遣として自社内に受け入れなければならない。指揮命令を行う代わりに、労働者の安全に配慮する義務も生じる。雇用責任を負わない外部の請負業者の西プラ社員に対し、九電が命令を下すことは違法ではないのか。

 九電報道グループは「号令は指揮命令に当たらないと認識している」。その上で「事故が発生しても、社員が現場で西プラ社員に指揮命令することはない」と説明する。

 「号令は違法にならないかもしれないが、実際の事故時に九電が元請けに命令しないというなら対応できないだろう」

 九州のある労働局関係者はそう指摘した。

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 関係者によると、九州で最初の原発である玄海1号機が運転を始めた1975年ごろ、ベテランの九電社員も現場で補修作業をしていた。その後、子会社や下請けに仕事が次々と外部化されていったという。

 13カ月ごとに行われる原発の定期検査は数千人が携わる。運転中よりも一気に必要人員が膨れ上がる一方、数カ月間の検査が終われば不要になり、変動幅は大きい。電力会社はこの雇用負担を、請負を取り入れて回避してきたともいえる。

 九電も、元請けとして西プラなど5社程度を持ち、各社の下に下請け-孫請け-ひ孫請けなどと連なるピラミッド構造となっているという。

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 放射線被ばくの危険と隣り合わせの原発労働。

 「元請けの責任者が下請けの作業員に命令するのは現場では当然」

 玄海原発で除染作業などをしてきた佐賀県内の60代男性は本紙の取材に、いわゆる偽装請負が「日常的にあった」と証言する。これに対し、九電は「これまでに偽装請負はなかった」(報道グループ)と回答した。

 仕事を出す側と、もらう側という上下関係が歴然と横たわる請負体制。その中で、作業員が偽装請負と受け止める労働現場。危険な作業ははかどっても、作業員の安全への配慮は十分なされているのだろうか。

 「(現場の)労働者は日陰者ではいけない。指揮命令はしっかりしてもらわないと、安全な作業なんてできない。ごまかされるような形態を取る現実がおかしい」

 前述の60代男性は、そう力を込めた。

=2013/01/08付 西日本新聞朝刊=

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