【コーヒー日和 福岡の街角で】(3) 2人で夢を追いかける

縁もゆかりもない福岡で夢をかなえた北添修さん(左)と岩瀬由和さん(右) 拡大

縁もゆかりもない福岡で夢をかなえた北添修さん(左)と岩瀬由和さん(右)

西鉄薬院駅近くにあるレックコーヒー

 フィルターに入れた粉のわずか1ミリのズレが味を大きく左右する-。

 コーヒーは繊細なんだと教えてくれたのは、西鉄薬院駅にほど近い「レックコーヒー」(福岡市中央区白金)の共同代表、北添修さん(32)と岩瀬由和さん(31)だ。

 店内に入りカウンター席に座ると、2人が口をそろえた。「同じ人間が入れても同じ味にならないですよ」。言葉の意味がのみ込めず、首をかしげると、北添さんが見かねて「まずは飲んでみてください」と、入れてみせてくれた。

 山盛りのコーヒーの粉を金属製フィルターに入れて、専用の機具で押し固めた。マシンに固定したら、高い蒸気圧で一気に抽出。抽出口からハチミツのように、とろっとした漆黒の液体がカップに注がれた。「エスプレッソ」の完成だ。一口飲むと、酸味が広がった後に甘さが残った。「おいしい」

 豆をひいてからコーヒーを入れるまで、1分足らず。動作の一つ一つがてきぱきしているので、簡単そうにみえる。粉を押し固めるときの力の加え方にむらがあったり、フィルターをどこかにぶつけたりするだけで、お湯の浸透が均一にならず、味が落ちるという。

 「豆をひいたときの粒の大きさ、量、フィルターに詰めたときの粉の固さ。他にも味を決めるポイントはたくさんあるんです」

 愛知県内にある福祉専門大学の同級生だった2人が福岡に来たのは2004年春。「縁もゆかりもない土地で勝負しよう」と乗り込んだ。

 飲食店やカフェでアルバイトをして、運転資金をためた。約350万円かけて08年4月、移動販売用のトラックを使って「コーヒー店」を開業した。今の店の近くの駐車場。車はスキー場でたこ焼き販売に使われていた中古車だったが、客に出すコーヒーは豆の特徴を引き出す本格的な味を追求した。

 20~30代を中心に常連が増えると、客の舌も肥えていった。「自信を持って出したときは反応が良いし、その逆もある。目の前で反応を感じられて、毎日鍛えられました」

 今の店を構えたのは10年8月。移動販売用のトラックから店舗へ。学生時代に抱いていた「店を持つ」という目標は実現したものの、山登りで例えるなら「目標の5合目あたり。究極の味を引き出すまではまだまだ」という。

 「バリスタ」と呼ばれるエスプレッソなどをいれるコーヒーの専門家がいる。経営者になった2人もバリスタとして現在も活躍している。岩瀬さんは、08年から全国大会に出場。11年には全国3位に入り、北添さんも昨年の同じ大会で準決勝まで残った。

 「豆の種類など、コーヒーの個性が問われる時代。バリスタは豆の力を引き出す実力が必要。うちの店のスタッフからバリスタの大会で全国優勝を出して、味で他店に負けないようにしたい」。2人は自らの腕を鍛えながらも、閉店後は若いスタッフを指導する。

 ふと思った。この連載で福岡の街を歩き、カフェや喫茶店を訪ねていると、共通した言葉が出てくる。「味へのこだわり」-。その本質を見極めるために、ある“豆職人”の元へ向かった。

=2013/03/01付 西日本新聞=

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