【コーヒー日和 福岡の街角で】(9) 貧しい生産者助けたい

カウンターに並ぶのは8種類のオーガニックコーヒー。中でも5種類はフェアトレードの豆を扱っている 拡大

カウンターに並ぶのは8種類のオーガニックコーヒー。中でも5種類はフェアトレードの豆を扱っている

約150人の子どもたちを前にフェアトレードについて説明する宮房武亮さん=2011年5月、福岡市東区

 カウンターに並べた八つのコーヒーカップに、産地が異なるコーヒー豆が山盛りになっていた。福岡市東区美和台の住宅地の一角にあるカフェ「ポップコーヒーズ」。オーナーの宮房武亮さん(44)が胸を張った。

 「店で扱う豆は農薬や化学肥料を一切使っていないんです」。九州では珍しいオーガニック(有機栽培)コーヒーを専門に扱っている。

 30代半ば、カフェ経営を学びに米国シアトルのコーヒー店を訪ね歩いた。どの店の棚にも、日本では見慣れない「オーガニックコーヒー」が並んでいた。なぜ米国でこんなに広がっているのか。帰国後、インターネットなどで調べて驚いた。

 ブラジル、エチオピア…。多くのコーヒーの生産農家が低収入と劣悪な労働環境に置かれていることを知った。過剰な農薬の使用で、農地や河川の環境汚染が広がり、生産者の人体への影響が出ているとあった。

 「農薬で苦しむ人がいるなら、農薬を使わないコーヒーを提供して現実を変えたい」。それをコンセプトに2006年、開店した。

 豆の仕入れも生産農家へ還元できる方法で行っている。

 「生産者が不当に安い価格で買いたたかれるのを何とかしたい」。豆の仕入れ方を学んでいると、発展途上国の原料や製品を割高な価格で購入し、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動があることを知った。「フェアトレード」。店で販売する5種類の豆はこの取引で仕入れる。

 業者が取り扱うコーヒーの生豆のうち、日本の有機認定の基準を満たしているのは全体の5%程度。その中で、フェアトレードで取引されている商品は数えるほどしかないという。オーガニックコーヒーの市場価格は同じ品種の3倍ほど高く、フェアトレードだとさらに1割高くなるが妥協しない。

 店を始める前まで、高校時代の友人とつくったIT関連会社の株式上場を目指していた。「一獲千金を夢見て、ギラギラしてましたよ」。コーヒーと出合って以来、利益よりも信念を優先する生き方に変わった。「知り合いからは人が変わったようだと言われます」

 グローバルに貢献したい考えは、コーヒーだけにとどまらない。その一つがサッカーボール。世界に出回っているボールの約7割を、パキスタンの子どもが安い賃金で作っていることを知った。

 そのことを日本の子どもたちや保護者にも考えてもらいたいと、08年から毎年5月、市内で少年サッカー大会「フェア・スピリッツ・カップ」を開いている。

 試合前、ボール片手に子どもたちに話をする。「このボールは君たちと同い年ぐらいの子どもたちが、手で縫って作っているんだ。1個できたら、いくらお金がもらえると思う」。小学校高学年の少年が首をかしげる。「20円だよ。でもフェアトレードなら120円になるんだ。だから食べ物も買えるんだ」と優しく説明する。

 店を構えて8年目。「自分がもうけようと思っていない。困っている人たちの手助けをしたいんです」

 その言葉を胸に刻み、店を出た。帰り道に書店に寄ると、喫茶店を舞台にした小説を見つけた。作家は太宰府市で執筆していた。


=2013/03/13付 西日本新聞=

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