【再起を支える】(3)「さらし者」の危険は 社会貢献活動

 「お兄ちゃんイケメンやね」「若いけん、力のあって助かるわあ」

 福岡県内のターミナル駅に近い高架下の通路。白髪のお年寄りに交じって、茶髪の若者たちがデッキブラシで路面の汚れを落としていた。ある者はジーンズを腰まで下げてはき、ある者は高級ブランドのバッグを斜め掛けしている。彼らは保護観察の対象者。社会貢献活動と称するボランティアで、自治会の清掃に加わっていた。

 保護観察中の人を公共の場所で奉仕させることにより立ち直りを促す社会貢献活動は、昨年度に福岡、熊本、鹿児島などで先行実施され、本年度から全国で始まる。「人の役に立つことで、自己評価が高まり更生意欲が上向く。社会のルールも身につく」。法務省は意義を強調する。

 通路の清掃前、集合した公民館で若者たちは、住民や保護司など十数人を前にぼそぼそと名字だけを名乗った。ホースで水をまいたり雑巾を使ったり、協力して汚れを落とすうちに打ち解けていった。通行人から「ご苦労さん」と声が掛かる。1時間もすると「こっちに水くださーい」と威勢のいい声を上げた。

 掃除を終えて再び集まった公民館。同行した保護観察官に促され、若者たちは順番に感想を述べた。「ルールを守ってやり遂げることができました」「初めてにしてはよく頑張れたと思います」。拍手を受けて、はにかんだ。翌日、その1人から公民館に電話があった。「また参加したいので活動日を教えてください」との申し出だった。

 こうした取り組みが、いつも地域に受け入れられるわけではない。

 福岡保護観察所の保護観察官の諸藤佑季(33)は昨年夏、福岡県内のボランティア団体に「おたくがやっている河川清掃に観察所も参加させてほしい」と頼んだ。

 「暴力を振るうような人間が来るとやったら、ボランティアたちが参加せんごとなってしまいます」。団体スタッフの言葉に、諸藤は理解が広がっていないことを痛感した。「立ち直ろうとしている人たちなんです」と説明し、非行少年の更生を助ける若者たちによる全国的なボランティア組織「BBS会」にも加わってもらうことでようやく了承を得た。

 活動には保護司からも「公衆の面前で対象者をさらし者にするのか」と反発がある。逮捕されても氏名や住所が報じられない少年の場合はなおさらだ。「こうした活動は欧米で盛んだが、日本にはなじまない気がする」と戸惑う保護司もいる。

 偏見から守るにはどうするか。保護観察の対象者が参加していることを一般の人に伝えない、茶髪などの身なりで周囲から浮かないようBBS会にも参加してもらう、屋内活動もする…など保護観察所は検討を重ねる。

 一方で駅周辺を清掃するくだんの自治会は、活動の場に駅長や副駅長を招いている。「駅長さんが見に来てくれるようなことをしよる、って彼らに思ってもらうことは効き目があるんよ」と世話役の女性(79)は言う。

 国会では、保護観察の対象者に社会貢献活動を義務付ける刑法等改正案が審議されている。役に立つ喜びを知ってもらうという本来の趣旨から外れて、刑の延長と同じではないかとの批判もある。
(敬称略)

 ▼社会貢献活動の義務化 保護観察の対象者に公共の場所の清掃や福祉施設での介助をさせる社会貢献活動は、欧米の「社会奉仕命令」がモデル。暴力団員などは含まない。現在は同意した人のみが参加しているが、国会で審議中の関連法案が成立すれば義務化される。懲役や禁錮刑の一部を執行し、残りの刑期は猶予することを判決時に定める「刑の一部執行猶予制度」も併せて審議中。いずれも社会での更生を重視する施策だが、監視の目にさらされて実質的な重罰化につながるとの懸念もある。

=2012/04/19付 西日本新聞朝刊=

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