【再起を支える】(5)表舞台に立たされて 保護司会活動

 夏休みの中学校の体育館に、ブラスバンドの演奏が響く。自治会長など300人を前に、保護司会の会長は壇上から呼びかけた。「犯罪をなくすために力を合わせましょう」

 川副陽介(64)=福岡市城南区=は集会前、体育館の壁にポスターを張り、パイプ椅子を並べる手伝いをした。4カ月前に保護司を引き受けてからの「初仕事」だった。

 地域ごとの保護司の集まりである保護司会は、1999年の法改正で公的に位置づけられ、地域の防犯・広報も担うようになった。川副が手伝った昨夏の集会はその一環だ。

 保護司の活動拠点となる「更生保護活動サポートセンター」も全国で設置が進む。北九州市の八幡保護区保護司会は、福岡県で初めて看板を掲げた。八幡東区役所に近い水道局の建物にあり、保護観察対象者と面接できる小部屋もある。

 「対象者だけでなく、一般市民に向けて何かしたいんです」と会長の花田則美(73)。常駐する保護司が非行少年の問題など相談を受けることも検討している。「手探りですけどね。会員の中には『何でそこまでせんといかんのか』と否定的な声もあるから」

 再犯防止には地域の理解と協力が不可欠-。無給のボランティアである保護司活動の幅を国が広げる背景にはそうした考えがある。「犯罪は地域で起き、罪を犯した人を立ち直らせるのも地域。そのことを広く知らせてほしい」と法務省幹部は言う。

 現場は戸惑っている。「少年サポートチーム推進協議会に学力向上連絡会…。月に10日以上、行事に呼ばれる。対象者との面接より組織活動が主になった」。福岡市早良保護区保護司会長の宮本侃(なおし)(73)の実感だ。

 なり手不足も変わらない。「社会的使命を果たして」と校長経験者や住職などを説得しても、忙しさを警戒してか断られることが増えた。早良保護区は定員を8人下回る76人。年配の人が多く来年は10人以上減る。「あんたんところ(後継者を)つくらないかんな」。会員の顔を見るたび、宮本の口をついて出る。

 川下りの水路に近い福岡県柳川市の住宅地。道路脇に「柳川保護司会館」と案内板が立つ。

 訪ねてくる保護観察対象者から「場所が分かりづらい」との声があり3年前に設置した。会館は30年前からある。「昔は会館自体、一般に知られたくない空気があった。保護司が表舞台に出て、社会の意識が変わってきた」。柳川保護区保護司会長の森田榮良美(76)は話す。

 地域一体となった犯罪予防の取り組みには手応えを感じる。ただ、気になるのは対象者やその家族の態度だ。「恥ずかしい、申し訳ないという気持ちが薄らいだような気がする。本当に罪と向き合っているかどうか、分からないときがある」。森田は首をかしげた。

 保護司2年目を迎えた川副は、いよいよ保護観察を担当することになる。「見ず知らずの私に心を開いてくれるだろうか。刑務所に代わる『見張り番』と思われたら負けですよね」

 役割は増えても、大切なのは罪を犯した人の更生を見守ること。川副は、対象者が地域に戻る夏を待つ。
(敬称略)

 ▼サポートセンター 2008年度から順次全国に設置され、本年度中に計155カ所に増やす予定。都市化でマンション住まいの保護司も多いことから、保護観察対象者や家族との面接や研修の場として想定されている。法務省の検討会は3月、センターを拠点に「地域から保護司が見えるようにすることが必要」と言及。児童生徒や保護者を対象にした学校への出前授業、非行相談の受け付けといった取り組みによって、更生保護について世論の啓発に努めるよう保護司に求めている。

=2012/04/21付 西日本新聞朝刊=

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