【再起を支える】(6)変革の波に惑う現場 保護観察官

 「テルオ(仮名)は目標とかあるや」

 「高校落ちたけん、来年もう一回受ける」

 3月下旬、福岡保護観察所の面接室。保護観察官の北川皇史(43)は、家庭裁判所の審判で保護観察処分が決まったばかりの少年と向き合った。

 「盗んだときは何も考えんかった。捕まらんならいいやって」。あどけなさが残る15歳に、北川は言葉をかけた。「自分の人生やけん、約束事しっかり守ってな」

 児童福祉司として児童相談所に勤めていた北川が転身したのは3年前。児相時代に非行少年と関わったが、家裁に送致すればそれっきりだった。「その後どうなるか、自分の目で見たかった」

 社会福祉士、精神保健福祉士の資格を持ち、精神科に勤務した経験もある。アルコール依存症の仮釈放者を担当した際は、酒に逃げ込む原因を面接で探り、専門の病院を紹介した。

 「面倒をみてくれる地域の機関につなぐことが僕の役割。これまでの経験が生きていると思う」

 行政職の一つにすぎなかった保護観察官に専門家が登用されるようになったのは、2006年の法務省有識者会議の提言がきっかけだ。観察官の「保護司任せ」の姿勢が再犯を防げない原因とみて、専門性や「人間力」の向上を求めた。専門知識と人格的魅力を併せ持つスーパーマン-。そんな理想像が浮かぶ。

 とはいえ北川のような専門家が急に増えるわけはない。覚せい剤や性犯罪の仮釈放者向けのプログラムなど、初めてのことは研修を受けながら当たるしかない。薬物事犯者への尿検査、仮釈放者と連絡がとれないときの警察への通報など、監視の目を強める取り組みも迫られて戸惑いもある。

 一方、人手不足は解消されていない。北川も常時200近い案件を抱え、少年と向き合う時間は「書類仕事に追われて児相時代の半分以下」とこぼす。「急激な変化についていけず、心を病んで倒れる人もいる」。観察官17年目の大山秀二(45)は打ち明けた。

 もともと観察官のやり方は千差万別だ。対象者に携帯番号を教える人もいれば、夕方にきっちり仕事を終える人もいる。「裁量の幅が大きく、職人的な面がある」と法務省幹部も認める。

 30代の女性観察官は、新人研修の席で聞いた先輩の言葉を信じている。

 「いろんな人を頼って社会と対象者をつなぐ。その引き出しを持っているかどうかだ。外に出て人脈を広げなさい」

 法務省に昨春入省した福島理瑛子(26)は福岡に配属され、昨秋から観察官の仕事を始めた。

 初めての面接は緊張した。「反省してます」という少年の言葉を信じたい。でも本心? 見極める難しさを味わった。

 2月。少年院に3回入ったことがある少年が保護観察を“卒業”した。「これでお別れと思うと、うれしい半面、寂しいね」。最後の面接で、少年を長年見守ってきた保護司の男性が話した。目を潤ませる母親の隣で、少年は照れくさそうにしていた。

 福島は心が熱くなった。

 「少年の立ち直りと保護司さんの喜ぶ姿。二重の喜びですね」

 変革の波に惑う現場にあって、新しい担い手は前を向いている。
(敬称略)

 ▼保護観察官の役割 罪を犯した人や非行少年の社会復帰に向け、保護司と協力して生活指導や就労支援などを担う。保護観察所や地方更生保護委員会に配属される。長期刑の仮釈放者など難しい保護観察対象者については、保護司に任せず自ら担当する「直接処遇」制度も2008年から始まった。法務省有識者会議は観察官の数を「少なくとも倍増すべきだ」と提言。06年度の650人から本年度は980人に増員された(管理職は除く)。福祉や心理学の知識を問う専門職採用試験も本年度から始まる。

=2012/04/22付 西日本新聞朝刊=

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