【裁くということ】(1)の2 進むか見直し論議 裁判員裁判3年

 市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が始まって21日で3年になる。これまでに全国で約2万人が裁判員を務め、3千人以上に判決が言い渡された。14人が死刑判決を受け、無罪や一部無罪は28人。判決を高裁が覆す例も増えている。極刑の選択や全面否認事件も増え、審理は長期化し裁判員の負担は増している。裁判員法は施行3年を見直しの時期と定めており、具体的な議論が始まる。

 最高裁によると、3月末までに裁判員裁判で判決を受けたのは3601人。2万817人が裁判員となり、7257人が補充裁判員を務めた。

 最高検によると、4月までに死刑判決を受けたのは首都圏連続不審死事件など14人(2人は確定)。全面無罪は、死刑が求刑されていた鹿児島市の高齢夫婦殺害事件など18人。うち8人は覚せい剤密輸事件の被告だ。

 だが8人中3人は控訴審で逆転有罪となった。千葉地裁が無罪、東京高裁が逆転有罪とした事件で最高裁は2月「事実認定がよほど不合理でない限り一審を尊重すべきだ」と再び無罪とした。控訴審の役割に初判断が示されたことで、今後の高裁の判決が注目される。

 裁判員裁判の平均開廷回数は、2009年の3・3回から12年は4・6回になった。首都圏連続不審死事件では裁判員の在任期間が最長の100日となり議論を呼んだ。

 九州の8地裁・支部では3月末までに470人が起訴され374人が判決を受けた。判決の地検別内訳は福岡146人▽同小倉支部40人▽佐賀18人▽長崎26人▽熊本37人▽大分32人▽宮崎21人▽鹿児島54人。罪名で多いのは殺人、強盗致傷、強姦致死傷-の順。

 死刑判決は、宮崎市で家族3人を殺害した事件と熊本県内で女性2人を殺害した事件の2人。ともに福岡高裁が死刑を支持、弁護側は上告中だ。全面無罪は鹿児島市の高齢夫婦殺害事件のみで、一部無罪は福岡地裁での放火事件と長崎地裁での強制わいせつ致傷事件。

 裁判員裁判を覆す高裁判決は10年から相次ぎ、今年3月末までに11件。福岡地裁小倉支部は10年、殺人罪に問われた暴力団幹部の裁判で、裁判員に危害が及ぶ恐れがあるとして全国で唯一、裁判官だけで裁いた。
(久保田かおり)

 ▼裁判員制度 刑事裁判に市民感覚を反映させることを目的に2009年5月に始まった。有権者から無作為に選ばれた裁判員と裁判官が共同で審理する。裁判員6人と裁判官3人が原則。対象は最高刑が死刑または無期懲役か、故意に被害者を死亡させた事件で、有罪・無罪と量刑を判断する。

 法令解釈などを除き裁判員は裁判官と同じ権限があり、法廷で被告や証人に質問できる。意見が分かれた場合は、裁判官1人以上を含む過半数の意見を採用する。

 ▼裁判員制度の見直し 裁判員法は、制度開始から3年を経た段階で実施状況を検討し、必要があれば見直すと規定している。法務省は2009年、裁判官や検事、弁護士に加え、大学教授や市民など11人を委員とする「裁判員制度に関する検討会」を設置。データの分析や裁判所、検察、弁護士の各代表、精神鑑定医、被害者団体からの聞き取りなどを終えた。

 今後、対象事件の範囲や死刑判断への裁判員の関与、守秘義務の緩和など具体的な課題について議論を進める見通し。

=2012/05/21付 西日本新聞朝刊=

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