【語る 罪と更生】(2)南高愛隣会理事長 田島良昭さん

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田島良昭理事長

 裁きの場で、被告席に座っておれずに立ち回る男性がいる。刑務所での労役を自分の職業だと信じてやまない別の男性は「仕事をしに刑務所に行きたい」と裁判官に言った。犯罪に手を染める知的障害者。罪を繰り返す「累犯障害者」に光が当たり始めた。刑務所ではなく地域を居場所に-。福祉の現場から声を上げる。

 「本当は気付いていたんです、罪を犯す人のこと。警察から連絡を受けて、以前から私の知的障害者施設で引き受けていましたから。でもその存在は隠してきました。施設を造るときに反対されて『障害者は天使です。悪い人はいない』と理解を求めたんですね。どこかでだまし合いをしていたんです」

 宮城県福祉事業団理事長だった2002年、入所型の県立知的障害者施設の廃止を宣言した。

 「下手すると障害者を一生施設に閉じ込める政策を国は続けていた。本人の意思は関係なく。やめさせるために打ち出したんです。そしたら、施設にいる『社会に迷惑をかける犯罪者』をどうするのかと批判を浴びました」

 旧知の法務省や厚生労働省の官僚らと勉強を始めた。法務省の統計で、全国の受刑者のうち知的障害の目安となる知能指数69以下が二十数%を占めることが分かった。

 「なんじゃこれは!って鳥肌が立ちました。施設だけでなく、刑務所にも障害者が大勢いることが衝撃でした。厚労省の役人も『事実だったらどうしよう』とうろたえた。一方で、法務省側は深刻さに気付いてすらいませんでした」

 省庁の縦割りのなかで見逃されてきた累犯障害者の存在。実態を把握して支援策を考えようと06年から6年間、厚労省の研究事業に主任研究員として没頭する。

 「やっぱり『申し訳ない』と。福祉が行き届かないために刑務所を出たり入ったりする不幸が続いた。福祉も刑務所も税金で運営されるのに、国民が知らなくては進化しない。もう隠してはいけないと思いました」

 刑務所から出所する障害者らの社会復帰を促すため地域生活定着支援センターの設置を提言。09年の長崎県を皮切りに、厚労省補助事業としてこの3月までに47都道府県に開設された。帰る場所がない人を受け入れる施設を探すが、出所者のうち福祉につなげられるのは半数ほどだ。

 「センターが地域の福祉施設を知らなかったり、うまく連携できていなかったり。職員の技量不足ですね。都市部は人手が足りずに苦戦し、地域格差も出ています。実績がないところには全国の協議会が勧告します。自浄作用で質を向上させないといけません」

 「出所者の受け皿として協力する福祉施設の数も十分ではない。生きる力の弱い人を支えるのが福祉。役割を問い直して担ってほしい」

 障害者が罪に問われたとき、捜査や裁判で障害に配慮した対応を求め、福祉施設が訓練を施して更生を目指す取り組みにも力を入れる。

 「司法の人は再犯防止を求めます。私たちは、どうすれば障害者が社会で豊かな人生を送れるかを追い求める。幸せなら罪は犯さないでしょ」

 検証委員会などを設け、福祉施設が適切な手当てをしているかチェックする仕組みも模索する。

 「累犯障害者を『いい顧客』とみて、施設にがんじがらめにしようとする動きもあります。障害者につらい思いをさせた過去がある。われわれが第二の刑務所になってはいけないのです」 (久保田かおり)

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 ▼たじま・よしあき 1945年生まれ。77年、長崎県雲仙市に社会福祉法人南高愛隣会を設立、知的障害者が地域で暮らすことを理念に掲げる。96~2005年、宮城県福祉事業団副理事長・理事長。10年に全国地域生活定着支援センター協議会代表理事、11年には最高検の知的障害者専門委員会の参与に就任、検察改革にも尽力する。長崎県島原市在住。

=2012/06/22付 西日本新聞朝刊=

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