【累犯障害者支援基金シンポ】(3)海外の事例報告

大石剛一郎氏 拡大

大石剛一郎氏

浜井浩一氏

 累犯障害者・高齢者に外国はどう向き合っているのだろう。専門家2人が報告し、日本にとってのヒントを提供した。

 ノルウェーとイタリアの政策を発表した龍谷大法科大学院教授の浜井浩一さん。検挙された人のうち60歳以上が30%、刑務所に入る人のうち60歳以上が15%を超える国内の現状を「先進国ではまれ。国際的にも驚かれている」と紹介。「厳罰化の影響で、障害者を含め社会的に弱い立場の人が刑務所に入るようになった。刑事司法に更生という共有の目標がないのが原因だ」と読み解いた。

 福祉国家といわれるノルウェーでは、高齢の受刑者・犯罪者が少ない。背景には最低保障年金と「逃げない福祉」があると説明。「高齢者は年金で経済的に困らない。その上、医療から図書館まで受刑者も一市民として同じサービスが受けられる。福祉が犯罪者を嫌がらない」と述べ、罪を犯した人を包み込む社会のありように言及した。

 一方、日本と同じ少子高齢社会でありながら60歳以上の受刑者は数%というイタリア。「刑罰の目的は更生」と憲法に明記されている。「刑が確定してもそのまま執行せず、更生のための罰をあらためて考える仕組みがある」と説明した。刑の確定後、矯正処分監督裁判所が受刑者の申請を受け、ソーシャルワーカーの調査を基に最適なあり方を再検討する。障害者や高齢者には保護観察や自宅拘禁などの代替刑が科されるのが一般的という。

 「社会全体を変えるノルウェー型か、刑事司法の中で対処するイタリア型か。どう考えるか参考になる」と促した。

 弁護士の大石剛一郎さん(東京)は、知的障害があるなど意思表示が十分でない人の取り調べに第三者の立会人をつける英国の制度を報告した。

 制度は冤罪(えんざい)事件を機に1984年に始まった。少年や知的・精神障害者が逮捕されると、捜査機関は家族らに通知して立会人の出頭を要請しなければならないことを法律で規定。立会人は容疑者に権利を理解させ、話しやすい環境をつくる手助けをする。立会人を養成する研修もある。

 大石さんは課題も挙げた。例えば、立会人にふさわしい人とは誰か。警察関係者以外で18歳以上の責任感ある大人とされるが「親だと先入観で決め付ける傾向があり、ソーシャルワーカーは警察を助ける側になりやすい」。立会人がつかなかった取り調べの供述も、裁判の証拠から必ずしも排除されない実態も指摘した。

 それでも、立会人制度がない日本に照らし「弱い人の権利保護のためにも、冤罪を防ぐためにも立会人は有効だ」と、可視化と合わせて取り入れるべきだと強調した。

=2012/07/20付 西日本新聞朝刊=

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