【健口(けんこう)づくりは0歳から】<中>「脳健美力」早期指導で

U型をしたAさん(小1)の口蓋 拡大

U型をしたAさん(小1)の口蓋

永久歯に生え替わったAさん(小6)の口蓋。きれいな歯並び 虫歯が多くてよくかめないため、前方の発育が悪くV型をしたBさん(小1)の口蓋 V型をしたBさん(小6)の口蓋。先端が狭く、犬歯が飛び出ている

 マスダ小児矯正歯科医院(佐賀県武雄市)の増田純一院長(72)が、乳歯が生えそろう3歳より前の口づくりが大事だと考えるに至った理由は何か。歯科の持つ「脳健美力」が、健康長寿のかぎを握るという増田院長に聞いた。

 ‐なぜ歯がない時期の重要性に気付いたのか。

 「地元の武雄小で15年間にわたり、全学年児童を対象に約1万3千枚の口腔(こうくう)内写真を撮っている。個別に6年間を連続で見ると、口の中の天井部分である口蓋(こうがい)の形が、歯並びやかみ合わせ、食べ方などにより大きく影響を受けていた」

 「口蓋の形の理想は、馬のひづめの形のようなU型。一方、歯並びの悪い子は、口の先端が狭まったV型だ。それは小6になって変化したのではなく、小1の時点で同じ形をしていた」

 ‐小1の段階の口を見れば、小6の時点での口が見えるのか。

 「歯は、舌が歯を押す刺激や、リズミカルにかむことなどによってきれいに並ぶ。舌が上手に使えて、虫歯もないような状態なら口蓋の先端が広がってU型になるが、逆だとV型になる。それは母乳や哺乳瓶での授乳の仕方、離乳食の与え方など、歯が生えてくる以前の食べさせ方に大きく影響を受けていた」

 「ところが離乳食の本を見ても、中身は栄養と調理が中心で、口については虫歯などの関連で少し触れているだけ。口の機能についての視点はない」

 ‐そこが抜け落ちている。

 「子どもが歯科医院に来るのは、多くは乳歯が生えそろう3歳以降。かくいう私も、これまで虫歯の有無やかみ合わせはチェックしても、口蓋の形までは見ていなかった。もし、歯科医師に口蓋を見る目があれば、永久歯が生えそろう将来の口の姿が容易に想像できるから、低学年の時点でも『食事のときはここを気をつけて』といったような指導ができるようになる。歯科衛生士の役割もますます大きくなるだろう」

 ‐「脳健美力」とは。

 「かむ効果を表した私の造語だ。脳=かむことで活性化▽健=栄養の消化吸収で健康に直結▽美=美味(おい)しい、美しい顔形▽力=運動能力の向上‐ということ。健口は子どもの健やかな成長と直結している」

 「幼児期は機能を獲得し、高齢期は衰えていく時期という違いだけで、口の重要性はどちらも同じ。衰える速度を遅くし、健康寿命を延ばすには、いかに健口のピークを高く保つかが鍵を握る。長寿へのアプローチは幼児の健口から始まる」

 ‐歯科特有の連続性だ。

 「早く病気を見つけて治療する早期発見・早期治療は、今や国民の常識。歯科でいえば、虫歯や歯周病治療もそう。だが機能面は違う。歯並びが悪い、しゃべりにくい、物がのみ込みにくくなったなど、異常が表面化し、機能が衰えた後に回復させようとするから効果が出にくいし、費用もかかる」

 「歯はかむためにあるが、きちんとかめるのは、舌や唇、口回りの筋肉などの機能があってできること。今、求められているのは機能面に着目した早期発見・早期指導だと考える」

((下)は5月6日付に掲載)


=2015/04/29付 西日本新聞朝刊=

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