【刑のかたち】(1)下 「軍隊式」から教育へ 再犯防止に続く試み

 40年以上前、18歳で刑務官になった九州出身の男性は「刑務所は監獄。監視するのが仕事だ」と先輩に教わった。

 受刑者が移動するときは手を肩の高さまで上下する「軍隊式」行進が当たり前。規律違反者には「愛のむち」もあった。社会から隔絶された空間は独特の雰囲気があり、受刑者たちは工場を担当する刑務官を「おやっさん」と呼んだ。おやっさんの顔をつぶすな、と。

 「とにかく刑務作業をやらせる場所だった。犯罪の根本に関わる教育なんてなかった」

 そんな「塀の中」の光景は過去の話になりつつある。きっかけの一つは、2001年に名古屋刑務所で起きた「放水死事件」だ。受刑者に消防用ホースで放水し死亡させたとして刑務官2人が有罪判決を受け、その閉鎖的な体質が批判された。元受刑者による再犯事件が絶えないことも「刑務所は更生の場なのか」との疑念を招いた。

 こうした反省から、一世紀近く見直されなかった監獄法に代わって06年に刑事施設・受刑者処遇法が施行された。受刑者の権利・義務、職員の権限を明確にし、受刑者への矯正教育を初めて義務化。「監獄」という文字は消えた。

 その後の改革は目まぐるしい。厳罰化の流れを受けて受刑者が増え、定員を大幅に上回る過剰収容が常態化する中、民間資金活用による社会資本整備(PFI)方式の刑務所が誕生。「社会復帰促進センター」と名付けられた。作業から教育へ-。民間の発想を生かした再犯防止教育など新しい試みが続く。

 受刑者の状況も変わりつつある。過剰収容は収まったが、社会よりはるかに早く高齢化が進行。福祉の網からこぼれ、軽微な罪を繰り返す累犯者だけでなく、60歳を過ぎてから万引を繰り返し初めて服役する人もいる。摂食障害などの疾患を抱える人も目立つ。福祉や医療の出番も多い。「外の力を借りなければ刑務所の運営はできない時代」と九州の刑務所長経験者は話す。

 政府は今年夏、受刑者が出所してから翌年末までに罪を犯して再入所する割合を10年で2割以上減らす目標を決めた。それなりの公費を投入することになる。再犯防止の成否は、私たちの暮らしと無縁ではない。

 刑務所はどこへ向かうのか。さまざまな「刑のかたち」に迫り「罪と更生」を考えたい。(相本康一、久保田かおり、一瀬圭司)

=2012/10/19付 西日本新聞朝刊= 

PR

PR

注目のテーマ