キャバレー編<118>再演 50年ぶりの中洲

50年ぶりに中洲で演奏する高畠(中央)と川端(右)=ゲイツ7で 拡大

50年ぶりに中洲で演奏する高畠(中央)と川端(右)=ゲイツ7で

 福岡市博多区中洲のライブハウス「ゲイツ7」には「ピット」いうライブコーナーがある。支配人の木下茂(58)が「地元ミュージシャンに演奏の場を」と3年前からステージの一画(約30席)を開放している。本ステージのない毎週火曜から木曜日の夜に開かれている。

 今月、その「ピット」で「川端仙一とタンゴアンサンブル」のライブがあった。バイオリン、ピアノにバンドネオン2人の4人編成。「ピット」ではフォーク、ブルース、ジャズなどさまざまなジャンルの音楽が流れる。木下は言った。

 「タンゴは初めてでした。やはり、キャバレー経験のあるバンドの人は毎日、鍛われていたのでうまいですね。できればこれから定期的に出演してもらいたいです」

 木下が驚いた一つはこのバンドのメーンの2人が80歳を超えていたことだ。それも年齢をまったく感じさせない力強い演奏だった。

    ×   ×

 「50年前を思い出しますね。久しぶりに夜の雰囲気を感じます」

 こう言って、バンドネオンの高畠哲夫(81)と川端仙一(86)は弾き始めた。

 高畠と川端は青春時代に、中洲にあったキャバレー「上海」「赤い靴」などでバンドマンとして演奏した経験がある。当時、バンドマンは引く手あまたで、2人ともキャバレー、クラブなどを掛け持ちで演奏していた。中洲の夜を駆け抜けた。

 この日はその懐かしきキャバレー時代の再演だ。ここに、タンゴの踊りが入れば、狭いながらもまさに、キャバレー空間になっただろう。

 「当時、中洲はキャバレーの店だけが大きかったな。周りはバラック建ての飲み屋や空き地でしたからね」

 ライブは1部と2部に分かれ、2人は1部ではバンドネオンを使った本場のアルゼンチンタンゴ、2部ではアコーディオンを使ったコンチネンタル(ヨーロッパ)タンゴを披露した。タンゴには欠くことができない二つの蛇腹楽器を聴ける異色のライブでもあった。

 「みんなが知っている音楽を弾かないと喜ばない」

 リクエストがあれば弾いたキャバレー時代のサービス精神はまだまだ健在だ。ライブの終盤、高畠と川端は「津軽海峡・冬景色」を、哀愁を帯びたアコーディオンで弾き、客席からはそれに合わせて歌う声も聞こえた。

 約1時間のステージ。エンディングはキャバレー時代には「蛍の光」が定番だったが、この日は童謡「故郷」だった。

 「川端仙一とタンゴアンサンブル」はこの日のために結成したバンドだった。

 「今後はこのバンド名でも活動していく」
 =敬称略

 (田代俊一郎)

=2012/06/19付 西日本新聞夕刊=

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