キャバレー編<130>バックバンド のど自慢や歌謡ショーで

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「音楽の中ではジャズが好き」と話す岩谷

 福岡市のギタリスト、岩谷弘明(59)はNHKの視聴者参加番組「のど自慢」(毎週日曜日)の九州エリアでのステージで演奏する一人だ。その予選は前日にあり、250組がエントリーする。本番に進むのはこのうちの20組だ。

 予選では250組分の分厚い楽譜が岩谷にも回ってくる。演歌から民謡、ロック、ポップスなど曲は多彩だ。予選では5時間も伴奏する。

 「キャバレーであらゆる音楽をやっていたので対応できる。キャバレーのおかげです」

 岩谷はこの仕事を30年以上、継続している。もちろん、本番でも演奏する。

 「昔の出演者は素人らしく緊張感で手がふるえている人が多かったが、今はみな本物の歌手のように堂々と歌いますね。カラオケなどで歌い慣れているようです」

    ×   ×

 岩谷は福岡県大牟田市生まれ。中学生のとき、母親がウクレレを買ってきたのが音楽の道に入るきっかけだった。 

 「当時、加山雄三の映画『ハワイの若大将』がヒットして、ウクレレブームがあったようです」

 ウクレレからギターに進み、高校を卒業後、東京で自動車業界に就職した。音楽への夢があり、夜はギターの専門学校に通っていた。まもなく、会社員を辞め、上野のキャバレー「ハワイ」のバンドマンとしてギターを弾くようになった。

 「ギャラはサラリーマン時代の2倍もありました」

 20歳の頃、東京の水が合わないこともあり、福岡に帰り、中洲にあったダンスホール「美松」のバンドマンになった。店を変わるたびにギャラが上がる。「プレイメイト」「チャイナタウン」「プレイボーイ」など20代はキャバレー、クラブなどで演奏する毎日だった。

 30代はキャバレーが下火の時代になり、「のど自慢」や歌謡ショーのバックバンドの仕事に移っていった。

 「鹿児島で三田明ショーのバンドをしてきたばかりです」

 歌謡ショーではさまざまな経験をした。ある歌手の九州公演ではこんなこともあった。

 「ステージの幕があくとお客さんがバンドの人数より少なかった。それでも演奏しました。一日2回公演でしたが、さすがに夜の部は中止になりました」

 岩谷はこうしたバックバンドの仕事をしながらウクレレ、ギターも教えている。

 「ウクレレは定年後に習い始める人が増えていますね」

 45年間、ギターと共に生きてきた。

 「死ぬまで弾くことになるでしょうが、キャバレーはバンドマンたちの黄金時代でした」

 =敬称略

 (田代俊一郎)

=2012/09/25付 西日本新聞夕刊=

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