昭和流行歌編<147>松平 晃 一世を風靡した男

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昭和を代表する流行歌手、松平晃

 今年で15年目を迎える福岡蓄音機倶楽部「ナツメロサークル」の例会は毎週月曜日の午後である。主宰者の福岡市南区の高松進(80)は「一度も休んだことがない」と言った。会員は150人。例会には40代から最高齢90歳までの30~40人が参加している。会費は700円。

 懐メロの会はいくつもある。高松は「うちのサークルは全国的にも珍しいのではないか」と言う。このサークルはカラオケ主体ではない。レコードなどで懐メロを聴く形を取っている。

 「古いものが好きで、SPレコード、LP、EPレコード、カセットなど1万枚くらい収集しています。その中から選んでかけます」

 参加者には毎回、6ページのコピー製冊子が配布される。若原一郎集、三橋美智也集、森繁久弥集、ディック・ミネ集…。数人の歌手の特集を組み、その全歌詞が冊子に記載されている。4時間に50曲を聴く。一年に約2500曲をかける。昭和歌謡史のゼミみたいなサークルだけに退屈させないように、高松は歌手のプロフィルや下ネタを含んだエピソードを挟み込んでいく。

 「ディック・ミネは3回、離婚し、離婚の際には全財産は渡した」

 それだけではない。例会の日は朝5時に起きて、参加者全員分の昼食、お菓子を作る。ちらしすしや大学芋など。参加申し込み者のほかに、飛び込みもあるので、プラス5人分も用意する。

 「うどん屋さんでだしに使ったコンブを分けてもらい、それを小さく切ってしょうゆで味付けしたりもします」

 すべて会費込み。ボランティアに近い行為だ。高松は「人の世話が好きですから」と笑った。

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 高松の好きな昭和の流行歌手の5人は藤山一郎、東海林太郎、ディック・ミネ、上原敏、松平晃だ。

 「藤山一郎と松平晃はよきライバルであり、よき友達でした」

 サークルの新年会ではカラオケもある。今年の新年会で、会員の隅田五次(83)は松平晃の「急げ幌馬車」を歌った。隅田は「昔から松平の歌が好きでした。この歌は北へのロマンを感じました」

 懐メロは「懐かしのメロディー」の略で、狭義の意味では1930年代から50年代の大衆歌謡だ。それは今は死語に近い「流行歌」である。

 高松は懐メロについて「世代を懐かしむ歌」と言う。その歌から人生や時代がよみがえってくる。

 高松が挙げた5人のうち、佐賀市出身の松平晃は歌手として数多くのヒット曲を出しただけでなく、映画俳優としても活躍、その栄光の割には資料は乏しい。昭和流行歌編の最初は一世を風靡(ふうび)し、1961年に49歳で死去した松平晃にスポットを当てながら昭和の世相、時代を追った。

 =敬称略

 (田代俊一郎)


=2013/02/12付 西日本新聞夕刊=

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