【健口(けんこう)づくりは0歳から】<下>正しいかみ方 一生の宝

【術前(7歳)】舌が下がり、二重あごになっている 拡大

【術前(7歳)】舌が下がり、二重あごになっている

【術後(10歳)】下あごの位置が安定し、すっきりしたあごに

 「歯が生えるまでの食べ方が大事」と、乳幼児期の口づくりの重要性を説くマスダ小児矯正歯科医院(佐賀県武雄市)の増田純一院長(72)。では、その時期に気付かなかったらもう手遅れか、といえばそうではない。増田院長が関わった7歳女児の症例を解説してもらった。

 いつも舌が前方に出ており、下顎が前の方に出た「受け口」の女児。本来、口蓋(口の天井部分)に付くべき舌先が、前歯の裏側にあるため、あごがたるんだ二重あごになっていた。

 ‐なぜこんな状態に。

 「筋肉は通常、その両端が骨とつながり固定されているが、舌は特殊で根元の部分だけが舌骨(舌根を支える首の骨)につながっている。この舌骨もまた特殊で、ほかのどの骨とも接触せずに、浮いたような状態で存在している」

 「それでも舌骨が一定の位置にとどまっているのは、あごの筋肉がしっかりと支えているから。従って正しい食べ方をし、筋肉を動かさないと、舌骨や舌の位置が下がっていく。年を取ると二重あごが増えるのはこれが原因。気道も狭まり、睡眠時無呼吸症症候群にもつながる」

 ‐この子の治療法は。

 「舌と唇の使い方を訓練した。まずは診療所に一カ月に2~3回通院し、訓練の仕方を覚え、あとは自宅で実践してもらった。かみ合わせに問題があれば簡単な矯正を施すこともあるが、真剣にやれば半年から1年できれいな口元になる」

 ‐具体的にはどんな訓練を。

 「今、つばをのみ込んでみてほしい。舌先を口蓋に付けてごくっと飲むはずだ。そうした食べ方や、スティックなどの薄いものを上下の唇にはさんで口を閉じる練習をする」

 「福岡市の内科医、今井一彰さんが考案した『あいうべ体操』=イラスト参照=も有効だ。『あー、いー、うー、べー』と、大きく口と舌を動かすことで、舌や口輪筋など口回りの筋肉が鍛えられて舌先が口蓋に付き、自然と口が閉じるようになる」

 ‐同じ子の3年後の写真を見ると、まるで別人のようだ。

 「校医を務める武雄小では、家庭で気になる食べ方をする子は半数以上で、高学年になるほど、かみ合わせの悪い子が増えていく。乳歯の時点では目立たなかったのが、永久歯に生え替わった時点で顕在化するということ。この子の場合、早く親が気付き(早期発見)、私たちの指導を受けた(早期指導)ことで、無意識に食べていたのが意識化でき、間に合ったといえる」

 ‐増田院長が提唱されている「30(さんぜろ)・60(ろくぜろ)・1200(じゅうにぜろぜろ)」を説明してほしい。

 「30は3歳までにいいかみ方を身に付けて虫歯ゼロに▽60は、6歳ごろに生える6歳きゅう歯を3~4年間虫歯ゼロに▽1200は、もし乳歯が虫歯になっても、永久歯に生え替わった12歳の時点で虫歯ゼロに‐の意味だ。正しいかみ方、のみ込み方を身に付ければ、それは一生付いて回るから、今後の高齢社会のありようにも寄与するだろう。それが健口(けんこう)歯科の願いだ」

 ((上)(中)は4月28、29日掲載)


=2015/05/06付 西日本新聞朝刊=

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