バリアフリー上映 資金募る 仏映画「奇跡のひと」6月公開

手話で映画への思いを語るアリアーナ・リボアールさん 拡大

手話で映画への思いを語るアリアーナ・リボアールさん

 生まれつき視覚、聴覚、言葉を失っている少女マリー・ウルタンと、彼女を教育した修道女マルグリットの実話を描いた映画「奇跡のひと マリーとマルグリット」が6月に国内で公開される。映画を機に、障害のある人も楽しめる「バリアフリー上映」を広げようと、インターネットで製作費を募るクラウドファンディングが行われている。

 作品の舞台は19世紀末のフランス。マリーは14歳になるまで、闇と沈黙に閉ざされた世界で生きていた。娘の将来を案じた父親は、聴覚障害のある少女たちが学ぶラルネイ聖母学院に救いを求める。手話はおろか、言葉の存在すら知らず、野生動物のように暴れるマリー。周囲が手に負えないと見放す中、重い病を抱えたマルグリットは教育係を志願する。困難の末に2人は心を通わせ、やがてマリーは言葉を知っていく。

 ジャン・ピエール・アメリス監督は、ヘレン・ケラーに感銘を受けて研究する中でマリーの存在を知り、映画化を決めた。マリー役には、聴覚障害者が通う学校の学生だったアリアーナ・リボアールさん(20)を起用。フランスでは、長編映画として初めて全国の映画館で、聴覚障害者も楽しめるように字幕付き上映が行われ、好評を博した。

 4月下旬に、映画のPRのため初来日したリボアールさんは「人間はそれぞれ困難や違いを持っているが、映画の前ではみんなが平等に楽しめることが大切だと思う。今作の試みが一つのモデルとして世界中に広がっていくことを願う」と力を込めた。

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 バリアフリー上映は、場面の視覚的情報を補う音声ガイドや字幕、手話を付けるといった環境を整えた上映方法。ここ数年日本でも増えてきているが、製作費や運営経費がかかるなどの課題もあり、特に初めから字幕が付いている洋画では普及が遅れているという。

 バリアフリー版の製作会社「パラブラ」(東京)の松田高加子さん=福岡市出身=は「バリアフリー上映を行えば一定の集客が見込める。人間らしく生きるとはどういうことか、みんなが考えることにもつながる」と説明する。

 今回のクラウドファンディングでは、吹き替え版に加え音声ガイドを製作しようとしている。製作費の7割にあたる50万円を目標に、公開日まで支援を募る。

 作品では、リボアールさんをはじめ聴覚障害者が修道女役を演じ、アメリス監督は手話通訳を通じて演出した。リボアールさんは「私たちには困難さがあるが、私たちを見るみなさんのまなざしがプラスアルファの困難さになってしまう。みんなが他人の困難さを理解し尊重するようになれば、社会はもっとうまくいくと思う」と語った。

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 映画は6月20日から長崎市の長崎セントラル劇場、27日から福岡市のKBCシネマ、大分市のシネマ5など九州各地でも上映予定だが、バリアフリー上映ができるかは未定。クラウドファンディングは映画公式サイトから参加できる。


=2015/05/09付 西日本新聞朝刊=

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