異国の夢 全力アシスト カンボジアのサッカークラブGM 福岡市出身、吉田健次さん(32)

 マンションなどが立ち並ぶカンボジアの首都プノンペンの中心街。サッカーコート半分ほどの練習場で、カンボジアンタイガーFCの選手がボールを追う。市民を熱狂させるリーグ戦は7月に開幕予定。クラブのゼネラルマネジャー(GM)を務める吉田健次さん(32)は「みんなに笑顔が戻った」と明かす。

 吉田さんは福岡市出身。小学生時代はサッカーや野球に親しんだが、中学1年で腎臓の病気、ネフローゼ症候群を発症。長期入院と療養を強いられた。部活動や体育の授業も制限されたが、スポーツへの思いは募るばかり。特に地元のJリーグ、アビスパ福岡の熱烈なサポーターだった。

 「(病気のため)スポーツで完全燃焼できなかったことが、今の情熱につながっている」。横浜国立大を卒業後、東京のIT関連会社に勤務したが、2013年春に「プロスポーツに関わる仕事をしたい」と退職。Jリーグのクラブで不採用が続いた後、インターネットで求人を見つけた東南アジアのクラブで夢をかなえた。

 営業担当として働いていた昨年12月。オーナーの日系商社が業績悪化を理由に運営から撤退を決定。13年に発足し、昨年昇格した1部リーグで12チーム中5位と健闘した新鋭クラブは窮地に陥った。「このまま選手とその家族を放り出せば、この国の子どもはサッカーに夢を持てなくなる」と、クラブ存続に全力を尽くす覚悟を決めた。

 前オーナーからクラブの無償譲渡を受け、吉田さんが暫定的にオーナーに就任。自身の預金約500万円から選手らの給与などを支払い、新オーナーを探した。自力でクラブを維持できるのは約2カ月。ブログで現状を発信し、知人を通じて複数の日本企業と交渉。3月、東京のコンサルティング会社「フォワード」にクラブを無償譲渡し、自身はGMに就任。それまでに支払った給与や経費は同社が負担してくれた。

 内戦終結から約20年。プノンペンの人口は150万人を超え、次々と高層ビルが建設されるなど発展は目覚ましい。国内で唯一のプロリーグがあるサッカーは、代表チームが18年ワールドカップ(W杯)ロシア大会のアジア2次予選に初めて進み、日本とも同組で戦う。国民の代表チームへの関心は極めて高い。

 その一方で、タイとの国境地帯などには、内戦の傷痕ともいえる多くの地雷が残る。「サッカーがカンボジアの希望の象徴になれば」。日本語のホームページを作成して日本から協賛金を募り、カンボジアの子どもたちにサッカーボールを贈る事業も展開する。

 クラブは現在、J2アビスパ福岡で活躍した木原正和氏(28)が監督として指揮を執る。今も半年に1度の腎臓の検査が欠かせない吉田さんも、週に1、2日はグラウンドで練習をサポートする。「裾野を広げ、世界的スター選手を育てたい」。南国の日差しで焼けた褐色の肌が、充実した日々を物語っていた。

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【ワードBOX】サッカー・カンボジアリーグ

 1982年に創設。かつては国防省など公的機関が運営するクラブが多かったが、近年は民間のクラブが中心。2013年にJリーグとパートナーシップ協定を締結した。カンボジアンタイガーFC(前身トライアジアプノンペンFC)は今季の1部リーグ(12チーム)に参戦予定。カンボジア代表がW杯アジア2次予選に進出したため、開幕が当初の3月から7月に延期された。


=2015/05/10付 西日本新聞朝刊=

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