昭和アイドル笑顔の音色 県庁マンビッグバンド指揮 早良区の石田賢哉さん(52)

「アイドル」たちと歌声を披露する石田賢哉さん(左から2人目)。「レッツゴーブリッコ」の電飾は手作りだ=4月4日、福岡市・天神のアクロス福岡 拡大

「アイドル」たちと歌声を披露する石田賢哉さん(左から2人目)。「レッツゴーブリッコ」の電飾は手作りだ=4月4日、福岡市・天神のアクロス福岡

 「出演者、全員集合」。ステージで司会の石田賢哉さん(52)=福岡市早良区=が号令を掛けると、そでから小走りで歌手たちが駆けてくる。ビッグバンドが演奏するのは昭和の時代、一世を風靡(ふうび)したテレビ番組「8時だョ! 全員集合」のオープニングテーマだ。「エンヤー コーラヤット ドッコイジャンジャンコーラヤ」。懐かしい振り付けを皆で踊り、石田さんが手を振りながら叫ぶ。

 「よろしく!」

 「昭和のアイドルのステージを再現し、地域を元気にしたい」-。福岡県社会活動推進課に勤める石田さんが、そんな思いでビッグバンドを結成したのは2013年12月だ。NHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」でヒロインがご当地アイドルになって地域を盛り上げる物語に「これだ」と思った。

 大学時代にジャズ研究会に所属し、サックスを演奏する石田さんは、青春時代に夢中になったアイドルたちを思い出した。麻丘めぐみの「わたしの彼は左きき」、松田聖子の「裸足(はだし)の季節」、中森明菜の「少女A」…。アイドルは圧倒的な数の聴衆の注目を一身に集め、命を削るようにしてけなげに歌っていた。「アイドル全盛の1970~80年代は皆が一つになり、明るく前向きな雰囲気があった。疲弊する地域の人も、あの頃を思い出せば元気が湧いてくるはずと思った」

 当初は県の事業としてできないかと企画書を関係課に提出した。だが、あえなく却下された。それでもあきらめきれず、職場や学生時代のつてを頼ってバンドメンバーを一人一人誘い、ついに約20人を集めた。

 ボランティアのバンドには、かつて人気だった「ダン池田とニューブリード」にちなみ、「ダン石田とニューブリッコ」と名付けた。ただ、肝心の歌手がなかなか決まらなかった。職場で声を掛けるものの、ことごとく断られた。やっとのことで知人の娘を通じて高校生3人を説得し、キャンディーズを猛特訓した。

 結成から半年後の昨年5月に、福岡市内の定員約80人のホールで初ステージを踏んだ。今やレパートリーは30曲に上る。これまで福岡県内の商業施設や道の駅で計6回公演を重ね、質の高い演奏に評判は上々だ。30日、福岡市・天神のアクロス福岡で開催する次回公演では新たにピンク・レディーの曲を披露する。

 石田さんはプロデュースだけでなくステージで司会や指揮をこなす。客席の視線も笑いも、自身で真っ正面から受け止める。自宅でパソコンのアイドルの動画に食い入る姿を、妻は冷ややかに見つめるが気にしていない。「いずれ地方の商店街や高齢者施設を訪ねたい」と、ギンギラギンに燃えている。


=2015/05/14付 西日本新聞朝刊=

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