【生きる 働く 第5部】LGBT 自分らしく<4>企業 環境整備の動き

ドイツ銀行グループのオフィスは、シャツやストールなど、LGBTへの共感、理解のメッセージを示す紫色であふれた=15日、東京都千代田区 拡大

ドイツ銀行グループのオフィスは、シャツやストールなど、LGBTへの共感、理解のメッセージを示す紫色であふれた=15日、東京都千代田区

 Tシャツ、ネクタイ、靴、ワンピース…。15日、東京都千代田区にあるドイツ銀行グループのオフィスは、紫色のものを身に着けた社員であふれた。

 2日後の「同性愛嫌悪とトランスジェンダー嫌悪に反対する国際デー」に合わせ、支援や共感を「Wear Purple(紫を着ること)」で示す社内キャンペーンが理由だ。

 「カミングアウトできない社員にとっても、支援しているというメッセージは大きな力になるはず」。同グループ、ドイツ証券の柳沢正和さん(37)は笑顔を浮かべた。4年前に、ゲイだと職場で明かした。同性パートナーとの同居が社宅の利用条件に合わないと不動産会社に指摘され、人事部に相談して家族扱いが認められたことがきっかけだ。

 2013年には、同グループのLGBT(性的少数者)ネットワーク「DBプライド」を日本でも立ち上げた。当事者が悩みを相談できる窓口を作って社内に告知し、LGBTをテーマにした講演会も開いた。パレードや映画祭など多様な性の啓発イベントに協賛し、他業界で働く当事者との交流を深めるなど、活動の場を広げてきた。

 同社やゴールドマン・サックス、野村証券など金融関連企業13社は、LGBTの社員の個性を尊重し、働きやすい環境をつくろうと「LGBTファイナンス」というネットワークをつくっている。今年3月には、LGBT学生を対象にした金融業界セミナーを都内で初開催した。

 職場でのLGBT施策は、欧米の企業が進んでいる。

 LGBTに配慮した福利厚生制度を設ける、広告に同性カップルを起用しLGBT支援のキャンペーンを展開する-などが主な取り組み。性に代表される「社会の多様性」への支持を表明することが、自社の価値向上につながるからだ。

 米国では、オバマ大統領が昨年7月、連邦政府と契約する企業に対して性的指向や性自認に基づく差別を禁止するという大統領令に署名した。国籍や文化など、さまざまな違いを超えてビジネスを展開するグローバル企業にとっては、今や必須ともいえる取り組みで、幅広く優秀な人材を確保するという点でも、メリットは大きい。

 一方、国内ではここ数年、多様な人材を活用する「ダイバーシティ」の考え方は浸透してきたが、「多様」は女性や外国人、障害者のことで、LGBTを含むのは、一部の外資系企業に限られていた。昨年あたりからようやく、社内指針にLGBTへの差別禁止を盛り込むなど、職場環境を整えようという会社が出始めている。

 英国の化粧品会社の日本法人「ラッシュジャパン」(神奈川県)は今年1月、届け出があれば同性カップルにも結婚祝い金を支給し、結婚、介護、育児休暇を取れるように制度を改めた。採用時のエントリーシートに性別を書く欄もなくし、全国約140の店舗でLGBT支援のキャンペーンも展開した。

 昨秋、同社に転職したゲイの社員(39)は「とてもありがたい。タイミングが来たら申請したい」と喜ぶ。以前の会社ではカミングアウトできなかったが、今は隠していない。「いろんな人がいて当たり前の企業文化が居心地いい。隠すストレスから解放され、仕事にも集中できる」と話す。

 SNS大手ミクシィの子会社で結婚支援サービスのダイバース(東京)も、昨年8月から結婚祝い金や慶弔休暇の制度を同性カップルや事実婚にも広げている。人事を担当する経営企画室の青木治夫マネジャーは「多様な人材がいた方が革新は起きる。マイノリティー(少数者)への偏見がないということは採用活動でもアピールになる」と語る。実際、その姿勢に共感して入社する人もいるという。


=2015/05/22付 西日本新聞朝刊=

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