【あした天気図 私の共同参画考】<2>「社会で子育て」政策を 小説家 平野啓一郎さん(37)

 ■新訳男女 シリーズ第24部■
 
 -少子化で国の将来が心配されます。

 「だからといって、国が『子どもを産め』と圧力をかけるべきではないと思います。その言葉に傷つく人もいる。産みたいのに産めない状況の人を助けることが重要です。認可保育所の待機児童問題が象徴的で、社会が子育てを支援する体制が整っていない。(親が働けるよう)保育所で子どもを預かることが一番の支援だと思うのですが」

 「保育所に預けるハードルが高すぎます。これから在宅で働く親も増えると思います。しかし、家にいると預かってもらえない。おかしい。(待機児童解消などのため保育所と幼稚園を一体化する)認定こども園も、早く進めればいいのに縦割り行政でなかなか進まない。そこを改善すれば随分変わるはずです」

 -共働きは増えており、妻と夫が家事や育児を分担できる社会が望まれます。

 「女性は、職場でキャリアが上がっていく時期と、子どもを産めるギリギリの時期が重なっています。出版業界では30代後半です。自分の将来の分かれ目で、2人の子を産んで産休を2年取ることには踏み切りにくいかもしれません」

 「だとすれば、20代の若い時期に、親が子育てをする余裕を持てる仕組みが職場にあるといいですね。その間、仕事をうまく同僚と分業することが必要です」

 -9月に出版した『私とは何か』で対人関係ごとに見せるさまざまな自分を「分人」という単位で表す考え方を提案しています。

 「人は、職場での分人、夫との分人、趣味の仲間との分人などが集まって構成されている-という考え方です。人はいろいろな分人を生きることで気分転換もできます。子育て中の専業主婦は、子どもとの分人が大部分を占めています。一つの分人しか生きられないストレスが、育児ノイローゼなのかもしれません」

 「専業主婦には、経済的な理由から、離婚したくても不本意な結婚生活を続けている人もいるでしょう。女性が、働く分人を持ち、経済的な自由を得ることはそんな問題も解決します」

 -子育て支援のアイデアはありますか。

 「仕事や子育てを終えた地域のシニア世代に、子どもを日中預かってもらうとか。費用は国や市町村が補助金を出してもいい。ベビーシッターは結構高額で、経済的に頼めない人もいるでしょうから」

 「子ども服はお金がかかるけれど、すぐ着られなくなります。お下がりで譲り合える仕組みをもっと盛んにしてはどうでしょう。うちにも譲っていただいた服やおもちゃがありますよ」

 -これまでは有権者の多い年配層が政策面で優遇されてきたように思います。

 「若い子育て世代に配慮させるための『ドメイン投票方式』という理論があります。親が未成年の子の数だけ投票でき、夫婦と子ども2人なら計4票です。ほかにも、20歳から45歳の有権者には2票与えるとか。そんな方法を考えないと、子育て世代に手厚い政策が打ち出されないのでは」

 「価値観として、社会全体で子どもを育てるということを考えるべきですね。広い視野で見ると、仕事や子育てをしている現役世代に有利な政策をした方が、(経済活性化や社会保障の安定で)高齢世代の生活も安定していくと思います」

 ▼ひらの・けいいちろう 1975年、愛知県生まれ。北九州市で育つ。東筑高校から京都大学法学部へ。大学在学中の99年に『日蝕(にっしょく)』で芥川賞。新著は『空白を満たしなさい』。家族、親子の絆を問う著作も多い。モデル、デザイナーの妻春香さん(37)、長女(1)と東京に住む。

    ×      ×

 ●衆院選 課題チェック=待機児童

 厚生労働省によると、認可保育所を希望しているのに入れない待機児童は4月現在、全国に2万4825人いる。定員増などにより前年同月比で731人減ってはいるが、認可外施設に通いながら認可保育所を希望している“隠れた待機児童”が1万5千人以上いるとされる。

 女性の社会進出に加え、景気低迷で共働きが増え、増え続ける高齢者人口を支えるために子育て世代が性別に関わりなく働いて支える必要もあり、子どもの居場所となる受け皿は今後さらに必要になってくる。

 保育所のさらなる定員増が求められる一方で、定員割れしている幼稚園が多いことから、保育所と一体化した「認定こども園」が2006年に導入された。ところが、幼稚園は文部科学省、保育所は厚労省が所管する縦割り行政が手続きを煩雑にさせていることもあり、2千カ所の目標に対して911カ所(4月現在)にとどまっている。

 社会保障と税の一体改革の中で、消費税の増税分のうち7千億円は子どもや子育てのために使うことになっている。待機児童対策はもちろん、どんな施策に活用していくのか、注目される。

=2012/12/05付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ