【あした天気図 私の共同参画考】<3>女性差別撤廃策が必要 内閣府男女共同参画会議 民間議員 山田昌弘さん

 ■新訳男女 シリーズ第24部■
 
 ●内閣府男女共同参画会議 民間議員 山田昌弘さん(55)

 -男女共同参画社会基本法が制定されて13年。法律や制度面での整備は進みましたが、実社会では女性差別が根強く残っています。

 「今、優秀な女性たちはどんどん海外に出て行っています。日本の企業には、いまだに性差別の慣習があるからです。一方、ここ10年で、若い女性の自殺率が高まっています。行き場がないんですね」

 「正社員として子育てをしながら働こうとしても難しい。非正規では安く使われて昇進もない。専業主婦になろうにも収入の高い男性は少ないし、親にパラサイト(寄生)しても二、三十年すれば生活が破綻してしまう。選択肢があるように見えて、どれを取っても成功しない人がたくさん出てきているのです」

 「少子化ともつながっています。親と同居している未婚者(パラサイト・シングル)の増加や女性の社会進出が不十分なことなどから、非婚化と少子化が進んでいる。男女共同参画を進めないことが原因で起きる問題はたくさんあります」

 -男女共同参画社会がもたらすメリットとは。

 「まず、税収が上がる。今の日本で働く既婚女性の大半は、控除の範囲で働くパートなので、いくら働いても税収は伸びない。男女共同参画が進み、女性が働きやすくなって、フルタイムの共働き家庭が増えれば税収も増えます」

 「それに共働き家庭の消費は活発です。服やレジャーにお金を使うので内需も増えます。企業が優秀な女性を登用すれば、商品に多様性が生まれ、いい商品ができる。女性管理職が多い企業は利益の伸びが大きいというデータもあります」

 -それなのになぜ、男女共同参画社会づくりが進まないのでしょうか。

 「国の財政や経済、企業にも男性にもメリットがあるのに進まない…。結局、変えたくないのだと思います。今の状況を変えて新しいところに踏み出す勇気が国にも企業にもない」

 「政治を動かしているのは、収入の多い立場にある男性ばかり。その人たちは男女共同参画のメリットに気付かないのではなく、気付いてはいるけれど『男は仕事、女は家事』という風潮がひと昔前まではうまくいっていたから、ノスタルジア(郷愁)を覚えているだけなんですよ」

 -国が取り組むべき具体的な政策とは。

 「まず、社会保障制度において男女差別をなくすことが一つ。会社員などの夫に扶養されている専業主婦は、保険料を納めずに基礎年金を受け取ることができる。この制度を変え、女性が働いても不利にならないようにするべきです」

 「二つ目は障害者雇用のように、女性の管理職や役員を一定数以上、義務付けるアファーマティブアクション(差別撤廃措置)を講じること。欧州連合(EU)は女性経営者を30%以上にすることを目標としていますが、日本はわずか1%という現状です」

 -改善するには。

 「男女差別をする企業を国が広報することも必要です。米国では女性差別をする企業に対して訴訟をどんどん起こし、差別的な扱いをすると企業は損をするという風土を作りました」

 「男女共同参画の実現のために、絡み合った制度を国が変えていくべきです。そうすれば、個人の意識は後から付いてきます」

 ▼やまだ・まさひろ 中央大学文学部教授。1957年、東京都生まれ。専門は家族社会学。学卒後も基本的生活条件を親に依存している未婚者を「パラサイト・シングル」と名付けた。2008年から、内閣府の男女共同参画会議で民間議員を務める。

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 ●衆院選 課題チェック=参画政策

 山田さんが民間議員を務める男女共同参画会議は2001年、男女共同参画社会基本法に基づいて内閣府に設置された。経済財政諮問会議、中央防災会議などと並ぶ「重要政策に関する会議」との位置づけだ。

 実際に施策を進めるのは男女共同参画推進本部で、首相を本部長とする。03年には「社会のあらゆる分野において、20年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする」との目標を掲げた。

 しかし、男女共同参画白書によると、10年度の国家公務員の管理職に占める女性の割合は、課長級で2・6%。地方議員や審議会などでも低調な数字が並んでいる。01年には特命担当大臣も設置されたが、任命されたのは12年間で14人に上り、多くは官房長官などとの兼務となっている。

 重要施策とは名ばかりの状況が続く中、2010年12月には第3次男女共同参画基本計画が閣議決定された。「2020年30%」の達成に向けて、男性の育児休業取得率を20年に13%へ引き上げるなど具体的な数値目標が示された。

 とはいえ、政治が本腰を入れて取り組まなければ結局、絵に描いた餅。重要施策に臨む姿勢が問われる。

=2012/12/06付 西日本新聞朝刊=

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