“保健室”の居心地を再現 高齢者つなぐ「カフェ」 熊本市の「しらかば」

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おしゃべりに花を咲かせるお年寄り

週に1度の健康チェック

 気軽に「助けて」と言える学校の保健室のような場所に-。そんな思いで運営されている熊本市北区植木町の「カフェ型保健室 しらかば」。新興住宅地にあり、孤立しがちなお年寄りが集う交流の場だ。お茶やおしゃべりを楽しみ、利用者が特技を生かした健康チェックに食育指導もある。安否確認など地域で支え合う仕組みにもつながっているというカフェを訪ねた。

 「上が142、下が84だね」。スタッフの吉村ひとみさん(56)が血圧を測り終えた男性に声を掛けた。

 「しらかば」では毎週水曜が健康チェックの日。スタッフには元看護師が3人いて、血圧や健康相談に応じる。利用者の二俣秀木さん(76)は「ここで不整脈を指摘されて病院に行かなかったら、心臓まひで死んでいたかも」としみじみ話す。

 資格を生かしているのはスタッフだけではない。カフェのモットーは「利用者全員が主役」。宮大工、観光ガイド経験者、裁縫が得意な人…。利用者が講師となって歴史講座を開いたり、ミシンで服や小物を作って販売したり、近所の子を招いて工作をしたり。田尻護さん(83)は「年を取るとなかなか新しい友達ができないけど、ここに来るようになってたくさん笑うからか、どんどん若返る気がする」とすっかり常連だ。

 運営するのは、NPO法人「小町ウイング」。2008年、理事長の工藤明美さん(57)が自宅横に約20平方メートルの平屋を増築してオープンさせた。平日の午前10時~午後3時、1回300円で誰でも利用できる。

 看護師や介護支援専門員の経験がある工藤さん。カフェを開いたのは、近所のお年寄りから「どこにも行き場所がない」と言われたのがきっかけだった。

 約20年前にできた新興住宅地は退職後に移り住んできた人も多く、高齢化が進んでいた。家のカーテンはいつも閉められ、互いの名前すら知らない。当時、地域おこしに取り組んでいた工藤さんは「何とか状況を変えたい」と考えた。

 そのころ悪性リンパ腫を発症し、医師に「余命2年半」と宣告された。「後悔しないようにやりたいことをしよう」とカフェをオープン。告げられた余命はとうに過ぎたが、まだまだ運営は続けられそうだ。

 利用者は、認知症の人、デイサービスが苦手な人、夫に先立たれた人とさまざま。清田希成さん(77)は在宅介護の妻がデイサービスに出掛ける日に訪れる。「ときどき愚痴を聞いてもらい、思い切り笑って過ごせば、家に戻っても穏やかに妻と向き合えるんです」とほほえむ。

 利用者の絆は強まり、1人暮らしのお年寄りが顔を出さないと、安否を確認するようになった。実際に、体調を崩していた人を病院搬送につなげた例もある。

 わずかな利用料での運営は厳しく、ボランティアが活動を支える中、工藤さんには強い思いがある。「医療や介護保険では支えきれない人を、地域のつながりで支え合う仕組みをつくりたい。こんな場所がほかの地域にも広がっていけばいいですね」

=2012/12/11付 西日本新聞朝刊=

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