ドッグセラピー笑顔の輪 施設訪問、人々癒やす 福岡・八女の市民グループ

「ぬくかでしょ?」「かわいかねぇ」。ドッグセラピーの参加者と会話を交わす末吉香織さん(左) 拡大

「ぬくかでしょ?」「かわいかねぇ」。ドッグセラピーの参加者と会話を交わす末吉香織さん(左)

 犬と触れ合い、心身ともにリラックスしてもらおうというドッグセラピー。福岡県八女市の市民グループ「フレンドリー」は、この活動にボランティアとして取り組んでいる。代表の末吉香織さん(32)も大切な家族を失ったとき、犬が心の支えになったという。人と犬が紡ぐ「家族の風景」を求めて、ドッグセラピーの現場を訪ねた。

 「ワンちゃんは好きですか?」。八女市立花町にある多機能ホーム「菜の花の丘」。フレンドリーの4人がチワワやダックスフントを抱っこし、集まったお年寄りに話し掛けた。

 一人の女性に、末吉さんが犬をそっと近づける。最初は怖くて膝掛けの中に手を入れたままだった女性は「おとなしかけん、かわいかね」と言って、いつの間にか膝の上で抱っこしながらほほ笑んでいた。別の女性は昔飼っていた犬を思い出し、犬をなでながら懐かしそうに話しはじめた。

 「ドッグセラピーを取り入れて笑顔が増え、表情が柔らかくなりました」とホーム管理者の中島環さん。末吉さんは「普段は物静かな人が犬に触れると話をしてくれたり、何かを思い出して涙をこぼしたり。1分でも30秒でも、幸せと思ってもらえるのがうれしい」と語る。

 市内の福祉施設で働く末吉さんはもともと犬が好きで「犬と一緒に働きたい」と8年ほど前から、別の団体でドッグセラピーの経験を積んだ。八女でも始めたいと思い、2006年にボランティアを募集。会社員や主婦、定年退職した人など約10人が集まった。いずれも犬を飼っている人たちで、基本的なしつけができていて全身へのスキンシップに慣れているなどの要件を満たした犬約10匹と一緒に活動を始めた。

 末吉さん自身も幼いころから犬を飼っていた。05年には大好きだった兄を若くして亡くしたが、悲しみに暮れる家族を犬たちが癒やしてくれた。

 墓前で兄を思い出して泣いていると、心配するかのように顔をのぞき込み、体を寄せてきたゴールデンレトリバーの「リヴ」。仏壇の前で座っていると、知らないうちに隣にちょこんと座っていたダックスフントの「小春」。

 「『きついんだよ、悲しいんだよ』と言っているわけでもないのに、人の心にすっと入って寄り添ってくれる。ありがたい存在ですね」

 フレンドリーは現在、市内を中心に老人ホームや知的障害者施設、児童福祉施設などを月に約15カ所、訪問している。小学校にも赴き、子どもたちに犬の心音を聞かせたりして、命の大切さを伝える取り組みにも力を注ぐ。末吉さんは「少しでも多くの人や犬に協力してもらい、もっとたくさんの笑顔や癒やしの場を増やしていきたい」と夢を描いていた。


=2012/12/18付 西日本新聞朝刊=

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