【いじめ 調査と指導 中学校の現場から】<上>アンケート 教師への信頼なければ

福岡県内の中学校で使われているいじめ調査のアンケート用紙 拡大

福岡県内の中学校で使われているいじめ調査のアンケート用紙

 全国の小中高校などを対象に文部科学省が実施したいじめ緊急調査で、14万件を超えるいじめが認知された。4月から半年間の集計だが、前年度の2倍に達した。生徒の自殺などを機に、いじめ問題がクローズアップされると急増する認知件数。児童生徒千人当たりの認知件数を見ても、鹿児島県が全国最多の159・5件、福岡県が最少の1件と、九州各県でもかなり開きがある。学校ではいじめをどう察知し、指導しているのか。福岡県内のある中学校を取材した。

 A4判のアンケート用紙には、九つの問いが並んでいる。第1問からずばり聞く。「あなたは、いじめられたことがありますか」

 回答は2択。「ある」と回答した生徒は「だれからいじめられましたか」、「ない」の場合は「だれかがいじめられているのを見たことがありますか」へと設問が続く。

 この中学校ではアンケートはこれまで、3学期ごとに1回ずつ実施されていた。授業を終えた「帰りの会」の15分を使い、全校一斉に調査する。学年と男女別は記入するが、名前は記入しない。

 ただ、教師たちは回収方法を工夫し、ある程度、生徒を特定できるようにしている。校長は「生徒のプライバシーもあるが、命に関わるようなケースを考えるとやむを得ない」。文科省の通知も受け、この学校では11月からは毎月調査を実施することにした。

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 1学期の調査が実施されたのは5月31日。生徒数500人を上回る大規模校で、「いじめを受けたことがある」と回答したのは約50人。約20人が「現在も続いている」と回答した。

 50人のうち学年別では1年生が約8割、男女別では男子が7割を占めた。「廊下で通りすがりに蹴られた」など、暴力が絡むケースもいくらかはあったが、いじめの大半は「冷やかしやからかい、悪口を言われた」。1年男子が被害を訴える傾向が強いという。

 校長の見方はこうだ。

 「新たな集団の中で、子どもたちも最初の1カ月は、みんなとつながり合おうとする。しかし、しばらくすると、みんなから認められない子がどうしても出てくる。そんな子どもの中には、自分の満たされない欲求を、弱い立場の子に向け、攻撃しようとする。1年生では女子に比べて男子が未熟で、いじめに関与したり、巻き込まれたりするケースが目立つ」

 アンケートを回収すると、教師たちは翌日から、手分けして昼休みや放課後、「ある」と回答した生徒を別室に呼び、聞き取り調査。訴えに基づき、今度は加害者とされた生徒を呼び、事実関係を確認する。

 深刻なケースほど、被害を受けている生徒は口をつぐみ、加害者側の生徒は事実を認めたがらない。説諭をしながらの確認作業には、学年単位などで教師たちがチームを組んで当たり、1週間はかかる。

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 1学期の調査ではこんなケースが明るみに出た。

 「ある」と回答した女子には、ちょっとした癖があり、男子から「キモい」などと言われ、心を痛めていた。調べてみると、心無い言葉を投げかけていた「加害者」が8人、それをはやし立てたり、面白がる「観衆」が5、6人いたことが分かった。

 いじめ認知にあたっては、校長、教頭、各学年の生徒指導担当、養護教諭らで協議する。校長は「このケースの場合、ほかの学校では『悪ふざけ』として捉え、いじめと認知しない対応もあるだろう」と言う。

 だが、聞き取りを基に「いじめ集団の構造図」を描くと、心無い言葉の集中攻撃を受ける女子生徒の痛々しい姿が浮かんだ。「火種がくすぶる1学期の対応が生命線」と考え、このケースを含めた計8件を「いじめ」と認知した。

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 この学校では、いじめの被害・加害両面の兆候を尋ねる保護者へのアンケートも年2回実施。生徒たちの規範意識、不安感などを探る心理調査(学校・学級満足度調査=QU)なども参考に、いじめの実態を探っているという。

 2学期のアンケートは10月末に実施。いじめ被害を訴えた生徒は15人。1学期の8件は解消されていたが、新たに6件をいじめと認知し、県教委に報告、指導に乗り出している。

 生徒指導担当の主幹教諭は「正義が通る学校、先生は必ず私たちを守ってくれる…。そんな生徒と教師の信頼関係がないと、子どもたちは本当のことを書かないし、語らない」。アンケートの前提となる、普段からの関係づくりの大切さを強調した。

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 いじめ認知の後、教師たちは生徒をどう指導しているのか。次回(25日)はその取り組みをリポートする。


=2012/12/18付 西日本新聞朝刊=

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