【暗闇の向こうへ 魂の殺人・性暴力】佐賀に支援拠点 開設5カ月 ワンストップで寄り添う

九州で初めて設立された「性暴力救援センター・さが」の現状について語る原健一さん 拡大

九州で初めて設立された「性暴力救援センター・さが」の現状について語る原健一さん

 ■新訳男女 語り合おう■
 
 性暴力に遭った人が、被害を受けた直後から治療やカウンセリング、警察への連絡などの総合的な手助けを1カ所で受けられる拠点「ワンストップ支援センター」を設置する動きが広がっている。7月に九州で初めて開設された佐賀県の「性暴力救援センター・さが(愛称・さがmirai)」の現状について、県DV総合対策センター所長の原健一さん(45)に聞いた。

 「さがmirai」は、県立病院好生館の相談支援センターに専用電話を設置し、性暴力支援について事前に研修を受けた女性の医療ソーシャルワーカー3人が交代で対応している。

 11月末までの5カ月間での相談数は63件。内訳は、強姦(ごうかん)・強制わいせつ41件▽性虐待9件▽ドメスティックバイオレンス(DV、家庭内の性暴力)7件▽過去の被害相談3件▽その他3件-だった。相談者の6割が20代以下で、10代が最も多かった。

 原さんは「性に関する知識が少なく、NOと言えないために若い世代が被害に遭いやすい」と指摘。携帯電話やインターネットに絡む被害も目立ち、会員制交流サイト(SNS)を通じて出会った相手から性暴力を受ける例もある。そこで来年度からは、性教育やデートDV(恋人間の暴力)を扱っている中学生向け予防教育事業に、性暴力被害の項目も盛り込む方針だ。

 性暴力に遭った場合、本来はすぐに産婦人科を受診し、緊急避妊や性感染症予防などの処置をするのが望ましい。しかし、自分を責め誰にも相談できず、通報をためらう人は少なくない。「さがmirai」でも、被害者が時間をおいて相談したケースが多く、産婦人科の診察は6件にとどまった。原さんは「緊急避妊が有効なのは72時間以内。急性期の対応が重要なことを広報していきたい」と話す。

 これまで、被害者に対しては産婦人科診療の公費負担など初期の医療支援制度があったものの、警察への被害申告が必要だった。昨年度の内閣府調査によると、加害者の8割近くが顔見知りだ。世間体や周囲への配慮などから被害届を出せず、医療費も自己負担せざるを得ないケースが多かった。被害後のカウンセリングなど中長期にわたる公的支援制度もない。

 「さがmirai」は、被害申告をしなくても医療支援が受けられる仕組みをつくり、カウンセリングも29回分を予算化した。心的外傷後ストレス障害(PTSD)などから仕事を辞めるケースもあるため、臨床心理士会や社会福祉士会とも連携し、被害者のニーズに応じたきめ細かな生活再建を支援する。

 課題も見えてきた。救急受診は24時間対応しているが、センターの相談時間は平日の午前9時から午後5時までに限られる。6月に開設された性暴力救援センター東京(SARC東京)は、24時間365日相談を受け付け、5カ月の相談数が702件に上った。夜間や休日の相談も多く、事務局長の平川和子さん(65)は「実際に被害が起きるのは夜間。急性期の被害者に迅速に対応するには、24時間ホットラインが大きな意味を持つ」と指摘する。

 ワンストップ支援センターは、佐賀を含めて5都道府県に設置されている。愛知は県警が主体、北海道は一部公費投入だが、民間が運営している大阪、東京は財政面が大きな課題となっている。佐賀の場合は、もともと地域にあった人材や組織を活用しているため、年間事業費が約500万円に抑えられた。

 原さんは「実務の中で関係機関との連携がスムーズになってきた。センターをより充実させて、人材や資金不足に悩む地方都市のモデルにしていきたい」と意気込む。

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 ●国は財政支援急いで

 ▼戒能民江・お茶の水女子大名誉教授(ジェンダー法学)の話 心身ともに深いダメージを受けた被害者には、早期に診察やカウンセリングなどの総合的ケアが必要で、安全な場所で寄り添う人が居てくれることも大切だ。国は自治体にきちんと財政支援をして、大都市圏以外の地方でもセンター設置や支援ネットワークづくりを急いでほしい。被害女性の支援経験がある民間団体などの力を活用することも重要になる。

=2012/12/22付 西日本新聞朝刊=

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