「誰もが多様な性の一つ」 同性愛を公表した元大阪府議 尾辻かな子さんに聞く

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「きちんと受け止め、孤立させないことが大切」と語る尾辻かな子さん

 ■新訳男女 語り合おう■

 ●カミングアウトしやすい社会へ みんなで変えていく 教員も意識改革必要

 「LGBT」という言葉がある。同性愛のレズビアンやゲイ、両性愛のバイセクシュアル、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの英語の頭文字を取り、性的少数者(セクシュアルマイノリティー)を意味する。ただ、そもそもセクシュアリティー(性のあり方)には個人差があり、少数者という枠でくくることに違和感もある。大阪府議在任中の2005年に同性愛者であることをカミングアウト(公言)した尾辻かな子さん(38)に「多様な性の見つめ方」を聞いた。

 -性的少数者という言葉をどう思いますか。

 「LGBTの国際会議でも『どこまで含めるのか』と疑問の声が上がっています。最近はLGBTの後にI(インターセックス、性分化疾患)やQ(クエスチョニング、自分の性のあり方を探している状態の人)を続けたり」

 -新聞やテレビで取り上げることが増えました。

 「2005年に私が公言した時は、一部に理解ある記者がいたくらいで、記事をほとんど見かけませんでした。少しずつですが、周知されてきたという実感はありますね」

 -一方で、いまだにバラエティー番組などで、笑いを取るという形で描かれることもあります。

 「日本の笑いってどこか『いじめっぽい』傾向がある。もう少しバランス良く取り上げてほしいですね。米国のホームドラマだと一定の割合でゲイやレズビアンが登場します。日常生活の中にいるという描き方をするんです。日本のメディアに足りないのは、マイノリティーが身近に存在していて、怒ったり泣いたり笑ったりちょっと嫉妬したり、そういう等身大の姿を描くことだと思います」

 -身近に当事者がいるか分からない場合もある。

 「カミングアウトしやすい環境がないから、自分たちの職場や地域に一緒に暮らしていることが分からない現実もある。性的指向は目に見えないので、黙っていれば異性愛者に見える。逆に、溶け込んでいるが故に私たちがそばにいることが分からない。カミングアウトできる社会をつくるのが先なのか、当事者のカミングアウトが先か。いつも議論になるところです」

 -ご自身はどちらが先だと思いますか。

 「カミングアウトできる社会をつくりたい。打ち明けられない要因の一つに、世間体があります。でもそれは、みんなでつくっているもの。みんなで変えていくという意識が必要です」

 -それには、子どものころから理解を深めておくことも大切とされます。

 「まずは教員一人一人が正確な知識を身に付けること。私たちはからかいの対象とされることが多い。それがいかに自尊心を傷つけ『笑いものにしていいんだよ』という価値観を子どもにばらまいているか。その深刻さに気付くべきです」

 「昨年、国の『自殺総合対策大網』が見直され、セクシュアルマイノリティーの自殺についても、無理解や偏見を社会的要因の一つと捉え、教員の理解を促すよう言及されています。学校教育の文化を変えていく時期。1人の先生が頑張るのではなく、全員で意識改革する必要があります。その働き掛けの手段として、研修や当事者の声を聴くことが大事だと思います」

 -打ち明けられると、どうしても戸惑ってしまう。

 「私も、どう反応していいか分からないという相談をよく受けます。驚くだろうし、返答に困るかもしれない。受容的、共感的態度を忘れないでほしい。孤立させてはいけない。もし自分だったら人に話せるか、置き換えてみてください」

 「いろいろな性を認識することによって、物事の見方や世界が広がります。自分が『異性愛』と気付くだけでも大きな一歩です。あなたも私も、多様な性のうちの一つなんです」

    ×      ×

 ▼おつじ・かなこ 1974年、奈良県生まれ。2003年、当時最年少の28歳で大阪府議に。任期中の05年、自伝「カミングアウト─自分らしさを見つける旅」を出版して同性愛者であることを公言。府議は1期務めた。

=2013/01/05付 西日本新聞朝刊=

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