【こんにちは!あかちゃん】 第1部 少子化 それぞれの理由<2>「望まない」「望めない」

子どもを望む人、望まない人、産婦人科にはさまざまな女性が訪れる 拡大

子どもを望む人、望まない人、産婦人科にはさまざまな女性が訪れる

 印象は悪くない。会話も弾んだ。福岡市内の落ち着いた店で、雪さん(37)は見合い相手と会った。「今度こそ」。帰り道の足取りは少しだけ軽かった。

 2年前に結婚相談所に登録した。IT企業で働き、趣味に打ち込む日々は充実していた。でも、老後はどうなるのか。焦りは次第に不安へ。そのうちに子どもが欲しくなってきた。

 親が晩婚だったせいか、幼いころから早く家庭を築きたいと思っていた。20代前半から9年付き合った彼とは、互いに結婚を意識した時期もある。別れたのはタイミングが合わなかっただけ。結婚が難しいことだなんて思いもしなかった。

 30歳を過ぎて友人が次々と結婚しても、親からのプレッシャーがあっても、のらりくらり。子育て中の同級生を見ても「大変そう」としか思わなかった。それが30代半ばにして、変わった。「子孫を残したいっていう動物の本能かも」。婚活を始めたことは、親にも友達にも話していない。

 収入や学歴はこだわらない。要はフィーリング。でも、20人近くと見合いをして、デートは3回がせいぜい。「今の快適な暮らしを変えてもいい」と思える相手は、なかなか現れない。

 最近は、親も結婚しろとは言わなくなった。まだ子どもは産めるだろうか。社会から自分だけが取り残されていくような気もする。

 おいっ子はかわいい。一緒にセミ捕りをしたりもする。でも、自分の子が欲しいとは思えない。

 独身の咲さん(40)は、離婚した妹と10年近く同居している。妹には息子がいる。常に目が離せず、気が休まらない子育ての現実を見ると「これが毎日続くのか」と尻込みしてしまう。

 フリーの立場で地域づくりを応援する仕事をしている。街に入り込み、住民と共に汗を流す。「いろんな人に出会い、その人を輝かせられる」。日々充実して楽しい。その反動なのか、プライベートでは「基本的に一人の時間、空間が欲しいタイプ」という。

 親の影響もある。「家族が嫌いでした。暗くて、本当の意味で仲良しじゃなかった」。大学に入るころ、両親は離婚。専業主婦だった母は、それから自信なさげに生きている。今も。

 だから自分は経済的に自立したかった。大学で建築を学び、コンサルタント会社で働いた。だが、独り身でもぜいたくはできない。しかも時代の変化はますます早くなる。「途中で流れから上がり、子育てをして戻って追いつく…。私には厳しい」。良縁があれば、結婚はしてもいい。

 「なぜ私だけが、って苦しんでいる人はたくさんいるんです。いろんな人生があるよと伝えたくて」。福岡市で暮らす幸さん(47)は昨秋、自身の不妊治療体験を初めて人前で語った。

 27歳で結婚。なかなか授からず、35歳で治療を始めた。体外受精9回で受精卵が着床したのは4回。いずれも途中で心拍が消えた。

 親戚や知人の「子どもはまだ?」という言葉が胸をえぐる。義弟に子どもが生まれても素直に喜べない。妊婦を見かけると目を背ける。流産のたびに自分を責め、夫の子であれば、いっそほかの女性との間にできた子でもいいとまで思った。

 「不妊治療ってジェットコースターみたい」。生理が来るたび、希望は打ち砕かれた。食欲はなくなり眠れなくなる。県外の病院へ新幹線で通い、当時は助成金もなく、4年間で数百万円使った。

 40歳を過ぎても治療を続ける人はいるが、もう限界だった。「子どもがいなくても幸せな人生はあるんじゃないかな」。夫の言葉でようやく決断できた。

 あれから8年。消えてしまった小さな命を思うと今も涙が出るが、心の整理はついた。友人の娘に「小ママ」と呼ばせ、かわいがっている。資格を取り、趣味や旅行を楽しむ。年々若返るね、と周囲に驚かれる。

 「病院のスタッフや同じ悩みを持つ仲間がいたからこそ乗り越えられた。経験が無駄だったとは思えない。よく頑張ったね、と自分を褒めたい」。これからは自分が支える番だと思っている。 (文中仮名)

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 ●メモ=少子化

 女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率は、1989年に1・57を記録。丙午(ひのえうま)のために出産抑制が生じた66年の出生率を初めて割り込んで「1・57ショック」として社会的関心を集め、国も少子化対策に乗り出した。

 しかし出生率の減少傾向は続き、2005年には統計史上最低の1・26となり、総人口の減少も始まった。その後わずかに回復し、11年は1・39。人口を維持するのに必要な水準は2・08程度とされている。少子化の要因としては、未婚化や晩婚化、夫婦の出生力の低下などが指摘されている。


=2013/01/08付 西日本新聞朝刊=

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