【こんにちは!あかちゃん】 第1部 少子化 それぞれの理由<4>夫婦間の不満と愛情と

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パートナーがいなければ小さな命を授かることはできない

 肌が触れる。嫌悪感。

 求められる。つらい。

 遥さん(29)が夫(33)を遠ざけるようになったのは出産がきっかけだった。「頭が痛いから」とうそをついたり、生理でもないのにナプキンを着けたり。「おまえ、男おると?」と疑われもした。出産後4年くらいは、不満がたまっていく夫とけんかが絶えなかった。

 なぜ、こんな気持ちになったのか。自分でもはっきりとは分からない。一つ思い当たるとすれば「自分の愛情が100だとしたら、子どもへの愛情が100になった。そこに夫は入らない。母親になりすぎたんだと思う」ということ。

 そのうちに夫は浮気をするようになった。服にキスマークを付けて帰ったこともある。それでも「家庭が壊れない程度なら」と見て見ぬふりをしてきた。子どもがいれば、それだけで満たされた。

 最近の夫婦仲は悪くないと思う。単身赴任を始めた夫への電話やメールは欠かさない。たまに帰ったときは、子どもを親に任せて二人で買い物に行く。

 でももう自分たち夫婦は女と男ではない。ただし、子どもはかわいいから2人目は欲しいと思う。体外受精であればセックスせずに済む、とまで考えたりもする。「夫にそこまで言えないし…」。もどかしい気持ちを抱えたままだ。

 31時間に及ぶ出産を終えた香さん(42)が病院から戻ったとき、夫(49)は留守だった。飲み歩き、帰宅したのは翌朝5時。産後の肥立ちが悪く、食事を運んだり、洗濯物を取り込んだりとちょっとした家事を頼むと「男がなぜそんなことをしなきゃならんのか」と怒鳴られた。10年ほど前のこと。

 出産直後から夫の仕事を手伝わされ、義母も「働かない嫁はいらない」という姿勢だった。渡される月5万円では足りず、チラシ配りのバイトをしてなんとか生活した。そうした状態でも夫は「2人目が欲しい」と言い続けた。

 不満を漏らせば「子どもは女が育てるもの」のひと言で片付けられる。そんな夫の要求に応じるわけにはいかない。それが夫婦間の亀裂の一因になっても仕方ない。「ようやく子育てが一段落してきたのに、つらい日々に逆戻りするなんて耐えられない」

 昨年10月、離婚が成立した。財産どころか家財道具すら分けてもらえず、養育費を払う気もないようだ。介護施設で働き始めたが、甲状腺疾患があるため無理はできない。現在、生活保護の申請手続き中。

 とはいえ、子ども1人なら何とか暮らしていける。でももし2人目ができていたら、別れる決意ができていただろうか。憧れていた大家族の夢は霧散した。

 仲むつまじい。だからこそ子どもは望まない。そんなカップルもいる。

 大学で准教授を務める花さん(39)は12年前、米国の国際機関で働くパートナーの男性(41)と事実婚で結ばれた。互いの生き方や価値観に引きつけられたからだった。

 一緒に過ごすのは夏と冬の数週間ほど。教職に情熱を注ぎ、そんな姿を彼は愛してくれている。自分も生き生きと働く彼が好きだ。二人にとっての「最優先事項」は仕事だった。

 一度は子どもについて話し合ったことがある。30歳を過ぎて間もない8年前のこと。結論は「子をもつメリットが、もたないメリットを超えない」だった。

 そこには生まれ育った環境が影響しているかもしれない。母も教員で、親代わりだった祖母は「あなたは大学院まで行くのよ」と繰り返し、自立した生き方を厳しくしつけた。一方で、義母や夫との関係に悩みながら働く母の姿を目の当たりにして「両立」の難しさも感じていた。

 ただ、この先は分からない。二人の生活環境や価値観が変わり、子どもが欲しいと思う時が来るかもしれない。その時点で妊娠が難しい状況であれば、米国やスリランカで接してきた里親になってもいいと考えている。「それまでは海外を旅したりして二人の時間を大切にしたい」。彼も同じ思いだ。 (文中仮名)

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 ●セックスレス

 日本家族計画協会が昨年12月に公表した「男女の生活と意識に関する調査」によると、1カ月間に性交がないセックスレスの既婚者は41・3%だった。2004年には31・9%だったが、2年おきの調査で、回を重ねるごとに少しずつ増えている。セックスに積極的になれない理由で最も多かったのは、女性が「面倒くさい」(23・5%)、男性は「仕事で疲れている」(28・2%)。「出産後なんとなく」(女性20・5%、男性17・9%)も目立った。年齢別では、35~39歳が最も割合が高く46・9%だった。調査は昨年9月、16~49歳の男女3千人を対象に実施し、1306人が答えた。

=2013/01/10付 西日本新聞朝刊=

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