【信仰×新考 うるおいプラス・心】心身鍛える「祈りの山」 福岡・宝満山

山頂は360度の眺望が素晴らしい。竈門神社の上宮もある 拡大

山頂は360度の眺望が素晴らしい。竈門神社の上宮もある

古くは山伏が修行した厳しい石段が続く 羅漢めぐりコースの金剛兵衛剣窟に並ぶ石像

 ■山伏上った石段 今は山ガールも

 福岡県太宰府市と筑紫野市の境に宝満(ほうまん)山(829メートル)という山がある。太宰府天満宮の北東にそびえ、1300年以上前から人々の信仰を集めてきた。古くは大宰府の鬼門よけで八百万神(やおよろずのかみ)をまつり、修験道の山伏が修行した。今は多くの登山者が訪れ「九州一、登られている山」とも。「祈りの山」の登山を体験してきた。

 元日からの寒さが緩んだ6日、宝満山に向かった。ふもとの竈門(かまど)神社は初詣客でにぎわっていた。その中にリュックを背負い、登山靴を履いた人々が交じっている。宝満山を目指す人たちだ。境内を抜けて登山道に入る。昼前だったが、もう下山して来る人も。「こんにちは」「こんにちは」。あいさつを交わす。

 2合目の「一の鳥居」をくぐると厳しい石段が続く。足に疲労がたまり、早くも音を上げそうになる。ガイドブックとして携行した『祈りの山 宝満山』(海鳥社)によると、鎌倉時代は修験道の修行の場として栄えた。この石段を往時の山伏も登ったのだろう。明治時代の神仏分離令で山伏は去る。しかし約30年前、宝満山修験会が結成され、山伏が戻ってきた。毎年5月には石段を登る入峰(にゅうぶ)修行などが催される。

 「息子は山伏さんと記念写真を撮ったことがありますよ」。年に数回登るという同県新宮町の会社経営、岩隈仁さん(40)と出会った。長男の雄哉君(9)、次女の彩乃ちゃん(6)と一緒だ。この山ではほこらや大岩に刻まれた梵字(ぼんじ)(古代インド語の文字)が随所に見られる。岩隈さんは「ほかの山とは雰囲気が違いますね」と魅力を語る。

 同県久留米市の主婦、栗林多美子さん(66)とすれ違った。月1回登るそうだ。毎年夏に北アルプスなど3千メートル級の山に登るのに備え、ここで鍛錬している。「手ごろな標高で道は険しい。ここに登れれば、九州の山はどこでも大丈夫よ」

 「百段ガンギ」と呼ばれるひときわ急な石段を登ると、竈門神社の中宮跡に着いた。修験道の中心道場があったが、明治初期の廃仏毀釈(きしゃく)で壊された。石垣などは鎌倉時代のまま残っているという。

 この山には泉など神聖な雰囲気の場所が多い。山道から「羅漢めぐり」という小道に入り、刀匠が修行したとされる岩窟を訪れた。つららの下がった岩陰に、何体もの石仏があった。

 山頂に近づくと雪が残っていた。巨石の岩肌をロープや鎖を持ってよじ登る場所もある。約1時間半で頂上に着いた。晴れた日は九重連山や有明海も望める360度の眺望。竈門神社の上宮に参拝した。

 既に今年3回目という福岡市中央区の会社員、橋田重典さん(60)は千回以上登ったそうだ。驚くと「5千回登っている人もいる」。何を考えて登るのか。「無心だよ」。山伏を見た気がした。

 近年は登山ブーム。家族連れ、単独のお年寄り、山ガールと呼ばれる若い女性の団体。数百人はいた。意識する、しないにかかわらず「祈りの山」の魅力に誰もが吸い寄せられていた。

=2013/01/11付 西日本新聞朝刊=

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