終末期治療 患者の意思を 「事前指定書」 二ノ坂医師に聞く

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二ノ坂保喜院長

 人生の終末期にどんな治療を望むかを、事前に文書にしておくのは、不本意な終末期を避けるためや医療費の浪費を防ぐ上で重要とされる。だが、日本では文書化の法的裏付けがなく、あまり普及していないのが現状だ。そのため高齢の患者と長く向き合う「かかりつけ医」に、文書化を促す役割を期待する声が強い。ただ、実践する医師はごく少数。その一人で「にのさかクリニック」(福岡市早良区)の二ノ坂保喜院長(62)は「普及は慎重に進めている」と話す。活動状況を聞いた。

 私は、カナダ人医師が提唱した「事前指定書」の普及に1994年に乗り出した。当時、病院では、高齢の患者が点滴や栄養補給のチューブを引き抜かないようにと、指先の自由を利かなくする手袋をはめさせるなどの「抑制」が横行し、患者が自分の手で鼻さえかけない終末期の在り方に疑問を感じていた。そんな時に指定書を知り、日本でも広めたいと思ったのだ。

 指定書は、患者が意思疎通ができなくなったときに活用されるものだ。体が回復可能な場合と不可能な場合に分け、心肺蘇生をするか、チューブでの栄養補給を希望するかなどを記入。チューブを使った治療を望まないと明記すれば、それが選択され、結果的に抑制も受けなくて済む。

 私がクリニックを開業したのは96年だが、患者に直接、指定書を書くよう勧めたことはない。患者はどうしても医師を「上」と見なし、私から勧めると押しつけになりかねないからだ。PRの方法としては、誰でも自由に参加できるクリニックの健康教室で2カ月に1回程度、指定書のことを取り上げている。

 私が指定書作成を支援するのは「書きたい」と申し出られたときだ。94年以来、関わったのは数十人。患者だけでなく、家族や地域住民もいる。指定書1件の作成に30分~1時間程度の面接が2、3回は必要。忙しいクリニック業務の中で時間の確保も課題だ。公的医療保険の対象外なので、1件の作成で3千円の相談料を頂いている。

 指定書は、患者の自己決定権が終末期に守られるために重要だ。ただ、日頃の自己決定権も保障されなければならないのに、不十分な現実がある。指定書の普及はかかりつけ医の役割と考えるが、それだけに熱心になるのではなく、自己決定権が患者の生涯にわたって保障されるよう一層努める必要がある。 (談)

=2013/01/18付 西日本新聞朝刊=

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