商店街 子どもの遊び場 九大生の空き店舗活用9年 福岡市東区

箱崎商店街の一角にある「きんしゃいきゃんぱす」。子どもたちが集まり、ばんこの上でゲームをしたり、ごっこ遊びで盛り上がる 拡大

箱崎商店街の一角にある「きんしゃいきゃんぱす」。子どもたちが集まり、ばんこの上でゲームをしたり、ごっこ遊びで盛り上がる

 ■ごっこ遊び、ボール探し 発想力育む
 
 九州大学教育学部(福岡市東区)の学生、卒業生たちが、地元にある箱崎商店街の空き店舗を活用し、オープンスペース「きんしゃいきゃんぱす」を自主運営している。子どもたちの遊びに必要な時間、空間、仲間(3間=サンマ)が失われつつある中、新たな遊び場、居場所づくりを目指している。商店街の活性化につなげようとする試みでもあり、開設から9年を迎えようとしている。

 きんしゃいきゃんぱすは、箱崎商店街の通称「きんしゃい通り」の一角にあり、隣は青果店。平日午後4時すぎ、当番の学生が空き店舗のシャッターを開け、ばんこ(長椅子)が出されると、学校の授業を終えた地元の小中高校生たちが集まってくる。

 けん玉や将棋盤など、ちょっとした遊具は用意されているが、特に遊びのメニューがあるわけではない。要は、子どもたちの「たまり場」。心理学などを学ぶ学生たちは、子どもたちの安全に目配りしながら、一緒になって遊ぶ。宿題を持ってくる子もいて、アドバイスをしたりもする。

 3学期が始まった8日。小中学生10人ほどが最初、けん玉や携帯ゲームでそれぞれ遊んでいたが、やがて誰かがテレビの中継リポーターをまねると、「ごっこ遊び」で盛り上がった。しばらくすると、女子高校生が立ち寄り、ひとしきり恋愛相談。そんな様子を、犬の散歩の途中、立ち寄ったお年寄りがばんこに腰掛け、ほほ笑ましそうに見守っている。

 冬の日暮れは駆け足で、午後5時半になると、みんなで後片付け。名残惜しそうに、シャッターが下ろされた。

 ☆ ☆

 その日、子どもたちの世話に当たっていたのは山下智也さん(31)。2004年7月の開設当初からのメンバー。九大教育学部を卒業後、現在は西日本短大保育学科で助教を務める。

 山下さんはかつて、九大教育学部の南博文教授の研究室で環境心理学などを学んでいた。「子どもの心を知るには、研究室ではなく、街の中にこそ答えがあるのではないか」。そう考えた南教授が、地域づくりのNPOや商店街関係者と連携し、空き店舗に「サテライト研究室」を開設したのが発端になった。

 「子どもたちとまず友達になろう」と、山下さんたちはその夏、大学祭の乗りでかき氷を販売した。すると地元の子どもたちが「お手伝いクラブ」を結成し、支援してくれるようになり、距離が縮まった。子どもたちはそれまで、それぞれの家を行き来して遊んでいたが、気兼ねなく集まれるようになった、という。

 現在は学生たち7人が輪番で対応にあたり、運営費は主に有志のカンパで賄う。学生たちにとっては、子どもたちを定点観察する「フィールド研究拠点」にもなっている。

 ☆ ☆

 「子どもが生き生きする瞬間はどんなときだろう。そこに大人はどう関わるべきなのか」。山下さんは、そんなまなざしで子どもたちと接している。

 例えば、ある年の梅雨にはこんなことがあった。水たまりで遊んでいたある子どもが、遊び心で絵の具を使って色水を作った。すると別の子はそれを「ジュース」に見立て、仮想の「商店街」へとイメージを膨らませ、新たなごっこ遊びが始まった。

 スタッフの学生の誕生日には、子どもたちがカラーボール20個を使い、商店街全体を舞台にしたボール探しゲームを生みだし、駆け回った。遊び下手といわれる最近の子どもたちだが、それは大人たちの決めつけなのかもしれない。

 山下さんは「そこに行けば、誰かがいるという安心感。毎日、何が起こるか分からないサプライズ感。都市の余白のような空間だが、だからこそ、子どもたちが主体的に発想力や想像力を働かせる場になっているようだ」と話していた。


=2013/01/22付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ