食材 一手間で無駄なく 魚の頭を焼いて干す 余り肉には酒塩 特徴知りおいしく保存 食生活研究家の極意

 世の中、不況である。ゆえに食費を一円でも切り詰めようと、人はスーパーの安売りに群がるが、わが身を振り返れば、そうして買った食材が冷蔵庫の肥やしになり、ごみにしてしまうことも多々ある。どうすれば、無駄なく、豊かな食生活が送れるのか。一手間かけて買ってきた食材をさらにおいしくする具体例をまとめた『食材食べ切り見切り時手帖(てちょう)』(池田書店)を刊行した食生活研究家・魚柄仁之助さんに、その極意を聞いた。

 ■食べ切ること 

 よくマスコミは「保存の仕方を工夫して長持ちさせよう」とか、節約して「1カ月○千円の食費で暮らした」とかいった取り上げ方をする。だが、保存や節約は目的ではない。食生活においては自分で買った食べ物を、無駄にせずにおいしく食べ切ってしまうことが真の目的だろう。

 カチンコチンになった干し柿も、細かく切って酒かすに漬け込んで10日もすれば、酒かす自体が濃厚なクリームのような味になる。これを知るとしめ縄に付いた干し柿まで欲しくなる。

 魚の頭だってそう。かぶと割りにして、一度焼いてから干しておく。すると干すことでこびりついた身にうま味が増し、お湯を注げば、おいしい潮(うしお)汁になる。

 乾物にしたから1カ月もつではなく、作ったらどんどん食べたくなるような加工をする。「おいしいものは腐らない」のだ。

 ■段取り知ろう

 ただし、そうした状況をつくるには、技がいる。生の肉や魚は、すぐに傷んで当たり前。買ってきてから冷蔵庫に入れるまでの、ほんの一手間が食材の寿命を左右する。まずは、食材の特徴を知ることが大事だ。

 切り身魚を保存する場合は(1)塩や酒かす、みそ、しょうゆに漬けるか、まぶす(2)パックから出してラップに包み、なるべく空気に触れないようにする。スライス肉が余った場合は(1)日本酒に少量の塩を加えた酒塩をまぶすか、塩をすり込むかして保存する(2)5ミリほどに切って塩をまぶし、天日で2~3日干せばスープのだしなどに使える。野菜は育った環境に合わせて(1)根菜類は光を避けて新聞紙にくるんで冷暗所へ(2)葉物野菜は葉先が乾かないよう湿らせた新聞紙でくるんだり、すぐにゆでて冷凍したり(3)縦に育つ野菜は立てて保存する-など。

 食材を買い、自宅の玄関を開けたところから、既においしく食べるためのテクニックは始まる。一見、その一手間が面倒くさそうでも、段取りさえ身に付ければ逆に時間短縮になる。

 ■守備を固める 

 そんなこんなで私の食費は、3食と会社勤めのカミさんの弁当まで含めて月7千~8千円、調理時間は3食作って40分弱といったところ。買い物は近所の商店街に週1~2回で、所要時間約10分。それでも刺し身はしょっちゅう食べるし、朝食も10品以上がズラリと食卓に並ぶ。何でも乾物利用で豆や雑穀、根菜類もよく食べるから栄養バランスもいい。最小限の光熱費で食料自給率と安全性の高い、健康で豊かな食生活を送っている。

 サッカーでも、攻撃陣ばかりそろえて10点取っても守備がいなくて11点取られたら、試合は負け。不況ならなおさら、収入を増やすことばかり考えるだけではなく、暮らしの基礎を固めて、反撃の時を待つことが必要だと、おじさんは思うのである。 (談)

 ▼うおつか・じんのすけ 1956年、北九州市戸畑区の料亭に生まれる。食生活研究家。知恵と工夫と実践力で、ゆとりある豊かな生活を送る。毎週木曜日午前8時5分から、KBCラジオ「ザッツオンタイム」で楽しいレシピを紹介中。東京都在住。

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 ●207レシピ掲載 魚柄さん監修の本

 魚柄仁之助さんが野菜や魚介、乾物などの食材をおいしく生かす207のレシピを提供し、監修した『食材食べ切り見切り時手帖(てちょう)』(A5判、128ページ、1050円)。どれだけ長く食材を保存するかではなく、食材をおいしく食べることを目的にした本で、食材ごとの特徴を解説した。下処理と調理法、見切り時について豊富な事例を元に易しく説明。さらに魚柄さんら4人の達人の台所の様子もカラーで掲載した。食材を腐らせず、有効に使うためのイメージがつかめるような構成になっている。

=2013/01/23付 西日本新聞朝刊=

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