【人の縁の物語】<4>心も温まるタオル帽子 闘病機にがん患者に贈る 福岡・大刀洗町 末次さん

タオル帽子を手に「つらいときこそ笑顔でいたい」と話す末次由美さん 拡大

タオル帽子を手に「つらいときこそ笑顔でいたい」と話す末次由美さん

 タオルで手作りした帽子で、身も、そして心も温められれば-。そんな思いで福岡県大刀洗町の末次由美さん(45)は「タオル帽子」をがん患者に贈る活動を始めた。自身も乳がんを患い、治療の副作用で髪が抜けて落ち込んだ時、タオル帽子に「温められた」経験がある。2年前には仲間とボランティア団体「あいう笑がお」を結成し、これまでに約370個を患者の元に届けてきた。「笑顔になって」というメッセージを添えて。

 2010年11月、末次さんは乳がんと診断された。1カ月後に左胸の全摘手術を受け、抗がん剤治療へ。副作用で「全身の骨が裂けるような痛み」が続き、髪はごっそり抜けた。

 外出時はかつらをかぶればいいが、摩擦で頭皮が痛くなり長時間はつけられない。かといって家族にそのままの姿を見せるのは、心配させるようで心苦しい。「それでも明るく接してくれる家族に涙を見せたくなくて、風呂場で毎日泣いていました」。変わっていく自分の容姿に耐えられず、ふさぎ込む日が増えた。

 そんな末次さんにタオル帽子を届けてくれたのは、15年来の友人だった。縦30センチ、横62センチのタオルを筒状に縫い、ニット帽のような形に仕上げられていた。

 毛糸のようにチクチクした感触がない優しい肌触りで、かぶってみると「ふわっとして温かい」。友人から、岩手県の市民団体などが作っている物を参考に手作りしたと聞き「私を思ってくれる気持ちの温かさ」も伝わってきた。

 以降、自宅ではタオル帽子をかぶって過ごすようになり、風呂場で泣く回数は減った。「私に何かできることはないかな」と力も湧いてきた。友人に相談すると「同じようにつらい思いをしている患者さんはたくさんいるはず」と背を押され、自分もタオル帽子を贈る活動をしようと決めた。

 手術から2カ月後の11年2月、「あいう笑がお」を設立。近所や知人に呼び掛け、月1回、自宅にあるタオルを持ち寄って帽子作りを始めた。抗がん剤治療の副作用で体調が優れない日があっても「みんなが待っていてくれる場所がある」との思いが支えになった。

 夫(43)と、当時高校生だった長女(20)も最初から参加してくれた。今では約120人のボランティアが活動。女性のがん患者にかつらを貸し出す福岡市のNPO法人「ウィッグリング・ジャパン」と連携して講習会を開くなど、人の縁を広げている。

 抗がん剤治療は半年で終わり、髪も戻ってきた。「活動を通していろんな人と出会えて、生かされて、私でもできることがあるんだと希望の光が見えてきました」と末次さん。再発の不安を抱えつつも「つらいときこそ笑顔でいれば、きっと周りも笑顔になれる。活動を少しでも長く続け、助けてくれた人たちに恩返しをしたい」と前を向く。

    ☆  ☆

 3月17日には「あいう笑がお」の活動を始めて2周年の記念に、大刀洗町のふれあいセンターでイベントを開く。乳がん闘病記の講話やタオル帽子作りの講習など。

=2013/01/29付 西日本新聞朝刊=

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