学生の皆さん 早寝と自炊心掛けて 福教大の“母” 看護師・飯田一恵さん 3月退職

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「学生たちの幸せをいつも願っている」と話す飯田一恵さん

 福岡教育大学(福岡県宗像市)の健康科学センターに、学生たちから、母親のように慕われている人がいる。看護師で心理相談員でもある飯田一恵さん(64)=福岡県宗像市。1986年からの勤務で、学生の体の不調だけでなく、心の悩みにも27年間対応してきた。3月末に退職する飯田さんに、学生たちに向けた「健康アドバイス」を聞いた。

 とにかく強調したいのは「早寝を心掛けて」です。少なくとも夜11時までには寝床に入りましょう。睡眠が十分だと、体だけでなく気持ちも元気になり、物事をプラスに考えられます。友人との少しの行き違いなどは気にならず、おおらかな気持ちで過ごせます。

 逆に寝不足のときは元気がなくなり、考えがまとまらなかったり、仕事や勉強がはかどらず時間を無駄にしてしまったりします。人間関係でも、ささいなことで感情的になってしまいがちです。

 気持ちよく眠る準備も大切にしてください。枕カバーやシーツをこまめに洗濯し、天気の良い日は寝具に太陽のぬくもりを吸収させて。そして、あなたが親になったら、あなたの子どもにも清潔な寝床を用意して早寝をしつけてください。

 早寝をすれば、生活にリズムが出て、いろいろなことにやる気が出ます。そこで、親元から離れている学生さんにやってほしいのが自炊。出来合いのものや外食は割高だし、添加物が多い場合もあるから、自炊の方がずっといいですよ。台所に立つ習慣を身に付けて一汁三菜を目標に少しずつ挑戦しましょう。

 長続きのこつは後片付け。前回の料理の後片付けがしてあり台所がきれいだと、新たな料理にスムーズに取り掛かれます。親と暮らす学生さんも将来の自立に向け、時々は自炊に励んでください。自分で自分の食事を作ることは心を豊かにします。

 早寝と自炊。この二つをきちんとすれば、あなたは幸せになれます。 (談)

 ■事故死の2学生に祈り 花を植え 毎月現場へ

 健康科学センターは、いわば「大学版保健室」。飯田さんの元にはけがをしたりした学生たちが、応急手当てなどを求めてやってくる。進路や人間関係で悩む学生たちも、心の安定を求めて訪れてくる。

 飯田さんは、悩みを抱える学生にはかしこまった面接方式は取らず、コーヒーを振る舞ったり、簡単な作業を一緒にしたりしながら、話しやすい雰囲気をつくって相談に応じてきた。その気さくな感じが慕われる理由のようだが、それだけではなかった。飯田さんと交流を続ける卒業生から、こんなエピソードも聞かせてもらった‐。

 飯田さんは、福教大から車で20分ほどの福岡県遠賀町の遠賀川に毎月1回、必ず通っている。そこで1996年2月9日に起きた水難事故で亡くなった福岡教育大ボート部員2人の冥福を祈るためだ。

 二人は広岡亨さん=当時1年生(20)=と、高尾保幸さん=同3年(20)。悪天候の中で練習していた広岡さんのボートが転覆し、高尾さんが救助に向かったが、二人とも水死体で発見された悲劇だった。高尾さんは健康科学センター(当時は保健管理センター)にしばしば通っていて、飯田さんはよく知っていた。

 飯田さんが遠賀川に通い始めたのは事故直後。最初の1年ほどで、夫の力も借りて造り上げたのが「祈りの場」だ。高尾さんが広岡さんを助けようと飛び込んだ川沿いの一角を、赤れんがで囲み、白の石を敷き詰めて仕立てたのだった。周囲にスイセンなどの花も植えた。「祈りの場」に通うのは、事故があった9日前後で、そこで手を合わせるのはもちろん、清掃や手入れも続けている。

 飯田さんに、この件について尋ねると「高尾君は島根、広岡君は愛媛に実家があり、親御さんが遠くてなかなか来られないでしょうから、私が親代わりで通い、その都度、二人に『天国で幸せにしていますか』などと話し掛けているのです」。さらに「祈りの場」には、花束やジュースなどのお供え物が、今なお続いていることを教えてくれた。「どなたがしてくださっているのか分かりませんが、二人を覚えていてくれる人がいることは、私にとってもうれしいことです」


=2013/02/01付 西日本新聞朝刊=

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